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僕は現場がきつい方が仕事としてはいいんじゃないかと思います。黒澤明や小津安二郎の映画は明らかにきつい現場だったろうと思います。ものにもよるでしょうが、きつい現場だったからこそ後世に残るものができたんじゃないかなと。僕は、すごく葛藤して、どうしたらいいんだと悩んで、迷った上で作っている人の映画の方が見たいです。だから、そういう意味では、今回はいい映画になったんじゃないかなと思います。僕と監督との間には、本当に終わるのかという緊張感がありました。だから、その葛藤を経て、ちゃんと厳しくやってくれて、最後にオーケーとなったので、ああ良かったなと。それがいい現場の証しじゃないかと思いました。もっとも本当に声優がしっかりしていたら、すぐ終わると思うんですけど(笑)。それを証拠に他の声優さんはビシッとすぐ終わったそうです。さすがですね。
監督は、岡本喜八の映画が好きだと言っていて、でも岡本監督はちょっと異色じゃないですか、『ジャズ大名』(86)とか『独立愚連隊』(59)もそうですけど、ポップな作品がいろいろある。監督はあのポップさみたいなものに憧れていると思うんですけど、この映画に関してもそれを感じます。これからさらに、岡本喜八色がどんどん出てきて、より面白い映画をますます撮っていかれるんでしょうね。「クラガリにひかれるな」という印象的なせりふがこの映画にありますが、塚原監督の今後はますますひかれるものになるでしょう。
レトロというノスタルジーもありながら、ちょっと未来も感じさせる独特の世界が描かれています。しかも、老若男女誰でも楽しめる映画になっています。刺さるポイントはおのおの違うと思いますが、とにかく絵柄に没入感があるので、すっと入り込みやすいというのが注目ポイントです。入り込んだら、またその先に面白い世界が待っていますというのはお伝えできるかなと思います。それから、見終わった後で、「あれ、どんな話だったっけ」と思うような、ちょっとトンネルに入るみたいな話になっています。だから、この映画に関しては、印象派の美しい絵を見るみたいな、そういう鑑賞スタイルの方がいいんじゃないかなと。どこへ連れて行かれるのか分からず、最後まで行っても、何か夢を見ていたみたいな、そういう体験ができると思います。
主役はこれが最後でいいかなと。もし続編ができて荘太郎の話が来たら、責任としてやらなければいけないとは思いますが、やっぱりプロの方がいいよという思いは強いですね。ただ、あえて僕を主役の荘太郎役に持ってきてくれた心意気はすごくうれしいなと思います。でもそれに応えられたかどうかは、お客さんが決めることかなと。
(取材・文・写真/田中雄二)
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