重岡大毅「芝居には『生きざま』が現れる」 東野圭吾原作の単独初主演映画でつかんだ俳優としての手応え 『ある閉ざされた雪の山荘で』【インタビュー】

2024年1月12日 / 16:00

©2024映画『ある閉ざされた雪の山荘で』製作委員会 ©東野圭吾/講談社

ーワンシチュエーションのミステリーですが、お芝居はどのように?役を事前に作り込んでいったのでしょうか、それとも現場でセッションするような感じで?

 その両方ですね。僕の大好きな冒険家の植村直己さんが「準備こそすべて」という名言を残しています。やれることは事前にすべてやり、現場ではすべて捨てる。本当にその通りで、事前の作り込みはもちろん大事ですが、あまりそこに凝り固まっていると、柔軟さがなくなってしまいますから。だから、その両方をいいあんばいでコントロールすることが大事なのかなと。

ーそういう意味では、久我には重岡さんの素の部分も出ていると?

 思いっきり出てますね。僕はどの役でも、自分の中にあるものを、いかに出せるかが勝負だと思っています。例えば、僕自身が劇団“水滸”に入りたいと思っているわけではありませんが、久我がそこまで入りたい劇団“水滸”に当たるものは、僕にとっては何だろうと。そんなふうに自分に置き換え、お芝居に反映していくんです。だから結局、突き詰めていくと、お芝居はすべて“自分ごと”になっていくんだなと。それが正解かどうかわかりませんが、僕はそんなふうにお芝居に取り組んでいます。

ーでは、劇中でも登場人物たちが「芝居とは何か?」という問いに答える場面がありますが、重岡さんにとって芝居とは?

 いろんなことを経験させていただく中で、一言で言うのはなかなか難しいな、とずっと思っていたんです。でも最近、ようやく「これかも」というものが見つかって。それが、「生きざま」です。自分が今までやってきたことや、人との出会いから生まれたもので勝負することになるので、芝居には「生きざま」が現れるな、と思って。

ーそうすると、お芝居にとって大切なのは、自分自身を磨き続けることでしょうか。

 そうですね。結局、未来は過去から作られるわけですから。それと、僕が常に言い続けているのが「健康第一」。仕事で十分なパフォーマンスを発揮するには、まずは食事や睡眠など、体調を整えて健康でいること。そうすると、心も健やかになり、結果的にいいパフォーマンスが発揮できるようになります。「健康第一」は、僕が20代からずっと言い続けてきたことですが、30代を迎えた今は「シン・健康第一」に進化しました(笑)。また、僕はアスリートに憧れているので、格闘家がリングに立つような気持ちでコンディションを整え、本番に備えようと思っています。そういう意味では、気持ちはアスリートと一緒です。

ーでは、この作品から重岡さんが俳優として得たものは?

 たくさんあります。いろんな人に出会えることが役者の仕事の魅力なので、そういう意味では、このメンバーでやれてよかったなと思います。やっぱりみんな、たくさんの現場を経験してきているだけあって、それぞれオンリーワンのものを持っているんですよね。だから、そばにいるだけでも「どんなことをするんだろう?」とわくわくするし、お芝居にも引き込まれてしまいます。逆に間宮くんが「一緒にやりたかった」と言ってくれたことも、僕の財産になりました。飯塚(健)監督からも刺激をたくさん受けましたし、いろんな収穫のあった作品です。

(取材・文/井上健一)

©2024映画『ある閉ざされた雪の山荘で』製作委員会 ©東野圭吾/講談社

『ある閉ざされた雪の山荘で』

1月12日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

配給:ハピネットファントム・スタジオ

 

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「場所と人とのリンクみたいなのものを感じながら見ると面白いと思います」今村圭佑撮影監督『青春18×2 君へと続く道』【インタビュー】

映画2024年5月9日

 18年前の台湾。高校3年生のジミー(シュー・グァンハン)はアルバイト先で4歳年上の日本人バックパッカーのアミ(清原果耶)と出会い、恋心を抱く。だが、突然アミの帰国が決まり、落ち込むジミーにアミはあることを提案する。現在。人生につまずいた3 … 続きを読む

田中泯「日本の政治に対する僕自身の憤りに通じる部分も多かった」世界配信となる初主演のポリティカル・サスペンスに意気込み「フクロウと呼ばれた男」【インタビュー】

ドラマ2024年5月9日

 あらゆるスキャンダルやセンセーショナルな事件を、社会の陰に隠れて解決してきたフィクサー、“フクロウ”こと⼤神⿓太郎。彼は、⼤神家と親交の深かった次期総理候補の息⼦が謎の死を遂げたことをきっかけに、政界に潜む巨悪の正体に近づいていくが…。先 … 続きを読む

海宝直人&村井良大、戦時下の広島を舞台にした名作漫画をミュージカル化 「それでも生きていこうというエネルギーをお見せしたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年5月9日

 太平洋戦争下の広島県呉市に生きる人々の姿を淡々と丁寧に描いた、こうの史代氏による漫画「この世界の片隅に」がミュージカル化され、5月9日から上演される。主人公の浦野すず役をWキャストで務めるのは、昆夏美と大原櫻子。すずが嫁ぐ相手の北條周作を … 続きを読む

「ジョンは初恋の人、そしてかけがえのない友達」『ジョン・レノン 失われた週末』メイ・パン【インタビュー】

映画2024年5月9日

 ジョン・レノンとオノ・ヨーコ夫妻が別居していた「失われた週末」と呼ばれる、1973年秋からの18カ月の日々。その時ジョンは、彼とヨーコの元・個人秘書で、プロダクション・アシスタントを務めていた中国系アメリカ人のメイ・パンと恋人関係にあった … 続きを読む

北村匠海「長谷川博己さんのお芝居は、やっぱり迫力がすごい」 日曜劇場「アンチヒ-ロ-」【インタビュ-】

ドラマ2024年5月8日

 長谷川博己が主演を務める日曜劇場「アンチヒーロー」(TBS系)が放送中だ。本作は殺人犯をも無罪にしてしまう“アンチ”な弁護士・明墨正樹(長谷川)の姿を描き、視聴者に“正義とは果たして何なのか? ”“世の中の悪とされていることは、本当に悪い … 続きを読む

Willfriends

page top