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藤原大祐「お芝居の概念を覆されるような経験でした」進境著しい若手俳優が、初のホラー映画で新たなチャレンジ『リゾートバイト』【インタビュー】

 ネット上で有名な都市伝説を下敷きに、小さな島の旅館で泊まり込みのアルバイトをする若者たちが遭遇する恐怖と衝撃の結末を描いたホラー映画『リゾートバイト』が10月20日から公開となる。本作で伊原六花扮(ふん)する主人公・内田桜と共に、恐怖の真相に挑む大学生・真中聡を演じるのは、藤原大祐。2003年生まれの20歳ながら、すでに『追想ジャーニー』(22)で映画初主演を飾り、「転職の魔王様」(23)などでも好演を披露している進境著しい若手俳優だ。公開を前に、ホラー映画初挑戦の舞台裏や俳優としての意気込みを語ってくれた。

Hair&Make-up : 佐々木麻里子、Styling :山本隆司(style³)(C)エンタメOVO

-ホラー映画初挑戦とのことですが、出演が決まったときのお気持ちはいかがでしたか。

 僕はホラー映画を見るのは苦手なのですが、その分、「どうやって撮るんだろう?」という興味はあったので、楽しみでした。

-演じるに当たって、ご自身ではどんな準備を?

 海外のホラー映画を3本くらい見て、お芝居のトーンや息遣いなどを勉強しました。ただ、かなりえぐい内容だったので、テンションはめちゃくちゃ下がりました(苦笑)。

-初めてホラー映画の撮影に臨んだ感想は?

 実際に現場に入ってみたら、予想以上にギャップを感じて。例えば、完成した映像ではCGのキャラクターがいる場面も、現場では何もないところで恐怖や驚きを表現しなければいけない上に、普通の撮影と違って、前後の芝居がないまま、その表情だけを撮ることも多かったんです。その分、お芝居も難しく、普通のテレビドラマや映画とは違った「ホラー映画」という別のジャンルの作品に参加しているような感覚でした。

-主演の伊原六花さんと共演するシーンが多いですが、現場での伊原さんの印象は?

 六花さんは、とても真摯(しんし)に作品と向き合う方でした。お芝居は緻密ですし、主演だからと言って偉そうにするわけでもなく、周囲の人に対して細やかな気配りをされていて、人間的にもすてきな方で。おかげで、現場はホラー映画とは思えないくらい笑いが絶えない明るい雰囲気で、すごく楽しかったです。ホラー映画は初めての僕が、気持ち的に乗っていくことができたのも、そうやって六花さんが座長として現場を引っ張ってくださったおかげです。

藤原大祐(C)エンタメOVO

-話は変わりますが、藤原さんは映画好きだそうですが、映画の現場の魅力をどう感じていますか。

 映画の現場は、基本的に映画好きな方が集まっているので、みんなで一丸となってもの作りをしている感覚がすごくあります。いろんな映画の話や「ここは、あの映画のあのシーン風じゃない?」みたいな話で盛り上がれるのも楽しいです。

-『レザボア・ドッグス』(91/クエンティン・タランティーノ監督のデビュー作となったクライムアクション)や『スタンド・バイ・ミー』(86/冒険旅行に出かけた少年たちの友情物語)といった昔の映画がお好きだそうですね。

 そうですね。僕が生まれる前の映画ですが、「映画のストーリーは出尽くしている」という話をよく聞くので、これから映画に携わっていく上で、その原点を見ておきたいと思ったんです。そうやって昔の名作を掘り返していったら、今の映画と全然違うところが好きになって。ストーリーも今の映画よりシンプルな分、ストレートに面白さが伝わってきますし。僕は元々、洋服もビンテージものが好きで、現在のモノの原点に興味があるんです。古いものを追いかけていくことが新しい、みたいな感じで。なので、昔のアメリカ映画を見るることの方が多いかもしれません。

-好きな俳優はリバー・フェニックス(70~93/『スタンド・バイ・ミー』、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』89などに出演)だとか。

 『スタンド・バイ・ミー』のリバー・フェニックスさんのカッコよさに引かれ、いろんな作品を見ていくうちに、どんどん好きになっていきました。しかも、リバー・フェニックスさんは若いうちに亡くなったので、僕の中では伝説的な存在になっているんです。現役の方で言えば、レオナルド・ディカプリオさんも大好きです。僕の好きな俳優は、「飾り気がなく、美しい汚れ方をしている」という雰囲気を持った方。ただし、「汚れている」というのは、外見的なことでなく、「世の中に対する不満や葛藤を抱えて、心の中が黒く塗られている」みたいな意味です。

-ご自身もそういう俳優になりたいと?

 そうなれるように、人間力を上げていきたいです。そういうものは、いろんな経験を積み重ねた中からにじみ出てくるものだと思うので。そのため、普段から自分の前に二つの道があったら、必ず厳しい方を選ぶようにしています。そうやっていくうちに、汚れた役もできるようになれたら…と。将来は「この役はこいつにしかできない」と言われる俳優になって、『レオン』(94/ニューヨークを舞台に、凄腕の殺し屋レオンと少女マチルダの戦いを描くアクション映画)や『レザボア・ドッグス』のような作品にも出てみたいです。

-そういう意味では、この映画も俳優として大きな一歩になったようですね。

 そうですね。ホラー映画はこれまでとお芝居のアプローチが異なる分、僕にとってはお芝居の概念を覆されるような経験で、学ぶことが多く、新たな課題も見つかりました。僕自身はいつまでも自分の芝居に満足することなく、常にチャレンジを続けていきたいと思っているので、今後も俳優をやっていく上では貴重な経験になりました。

-最後に、この映画をご覧になるお客さんへのメッセージを。

 予告編ではいかにもホラー映画らしい怖さが漂っていますが、実はこれまでのホラーとは一味違った内容で、テンポも早く、90分があっという間の“新感覚ホラー”です。結末を知っている僕でも、完成した映画を見た時、驚きや新鮮さを感じる部分がありました。永江(二朗)監督も「お子様でも楽しめる作品に」とおっしゃっていたので、だまされたと思って、ぜひ幅広いお客さんに、劇場に足を運んでいただけたらうれしいです。

(取材・文・写真/井上健一)

 


 

映画『リゾートバイト』 10月20日公開

出演:伊原六花 藤原大祐 秋田汐梨 松浦祐也 佐伯日菜子 梶原善

配給:イオンエンターテイメント

 

 

 

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