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シガーニー・ウィーバー「14歳を演じるのではなく、14歳のキリに成り切るという作業でした」『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』【インタビュー】

 ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』13年ぶりの続編で、舞台を森から海に移した『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が、12月16日から全国公開される。今回は、ジェイク(サム・ワーシントン)とネイティリ(ゾーイ・サルダナ)との間に新しい家族が増え、家族の愛と絆の物語がエモーショナルに描かれる。前作で命を落としたグレース博士の実の娘で、ジェイク一家の養女となった14歳のキリを演じたシガーニー・ウィーバーに話を聞いた。

シガーニー・ウィーバー (C)エンタメOVO

-今回演じたキリは14歳。スピリチュアルな面もある複雑なキャラクターでした。どのようにして作り上げていったのでしょうか。

 今回は、準備をするための時間が結構ありました。ですから、ほとんど自分で作っていきました。自分自身がティーンエージャーだった頃を思い出したり、実際に高校を訪れて、生徒たちをいろいろと観察させてもらい、彼女たちが、どういうふうに話すのか、声の質、歩き方、そして、どんな感情を持っているのかを参考にしました。ジム(キャメロン監督)にキャスティングされると、キャラクターを全部自分で作り上げるという気持ちでいなければなりません。その点、今回はとても時間があったので、早く現場に行ってこの少女を演じたいという気持ちが爆発しそうになりました。スピリチュアルな面に関しては、キリの中には、エイワとの関係など、たくさんの疑問があって、答えが出ていないところがあります。だから、内面的には複雑なものを抱えているので、キリは動物や自然の中にいてこそリラックスできるキャラクターなのだということを意識しました。

-14歳のキリをどのような感情で演じたのですか。演じる上で何か役立ったことはありましたか。

 私は、11歳のときに、すでに今と同じ身長でした。ですから、11歳から15歳の間のことは、とてもよく覚えています。しょっちゅう物にぶつかるし、自分が怪物になったような、嫌な気分でした。真面目な部分もありましたが、時にはふざけることもありました。そうした記憶が、鮮明に残っているんです。今回は、そうした要素を取り入れてみました。それから、先ほどお話ししたように、実際に高校を訪れて、彼女たちがどんな声をしているのかを観察しました。すると、とても子どもっぽい子もいれば、大人っぽい子もいることに気付きました。そうしたリサーチで得られたものをキリに入れていって、脚本も参考にしながら、キャラクターを作っていきました。14歳を演じるのではなく、14歳のキリに成り切るという作業でした。

-今回は、全編ほぼナヴィでの登場でしたが、完成作で素顔が出ないというのはどんな気持ちですか。

 今回のパフォーマンスキャプチャーはとても素晴らしくて、タトゥーを後から追加したりはしましたが、基本的には私の演技をそのまま生かして作り上げています。顔の形も、表情も全て取り込んでいるので、素顔が出ない点については、特に意識はしていません。あれは私自身と言ってもいいのかもしれません。

-水中での撮影は息ができずに大変そうでしたが、どんな感じでしたか。

 撮影の9カ月前ぐらいから、トレーニングをしました。波が作れるとても大きな水槽の中に、ダイバーたちが生き物の代わりに入っていました。それを見てとても興奮しましたが、同時にとても怖かった。ですから、いつも15分ぐらい前に現場に行って、まず心拍数を整えるようにしました。ナヴィは空気を出さずに、自分の中にためておくので、泡が出るのはロアクが溺れそうになるシーンだけです。そもそもナヴィとしては泡を出してはいけないので、それが大変でした。

-今回は、50歳以上も年の離れたティーンエージャーとの共演がありましたが、いかがでしたか。

 もちろん、彼らとの共演を楽しみましたが、今回は私もティーンエージャーの一人をやったので、彼らと同じグルーブになるわけです(笑)。彼らはとても才能にあふれていて、とても仕事熱心です。ジェームズ・キャメロンのために仕事をするというのは、そういうことが必要なんです。とてもレベルの高いところを目指さなくてはならないのに、ジムをがっかりさせたくないから、一生懸命にやるんです。本当に彼らは、素晴らしいグループで、私も一緒になって楽しみました。

-ジェームズ・キャメロン監督の印象と、何か彼の意外な一面があれば教えてください。

 ラッキーなことに、彼とは長年にわたって付き合いがあります。『エイリアン2』(86)のときは、とても真面目で、何かに突き動かされているようなところがありました。彼は完璧主義者で、科学者でもあって、いろいろな技術も開発しています。ところが、『エイリアン2』の後で、一緒にツアーに行ったときに、食事をしながら話していたら、「真面目だと思っていたのに、何て面白い人なの」と気付きました。つまり、彼はそうした面を私に隠していたんですね。皆さんが、彼に関して知らないところは、今とてもハッピーな家族に恵まれていて、子どもたちから謙虚さを学んだと言っています。それによって遊び心が出てきたと思います。彼は、才能にあふれたとても楽しい人です。

-これまで、『エイリアン』や『ゴーストバスターズ』、そしてこの『アバター』など、SFや超現実を描いた映画に多く出演していますが、そうした映画への思いは。そして、その中でも『アバター』は特別なものになるのでしょうか。

 『アバター』はほかの作品とは全く違います。SF映画といえば特殊効果が話題になりますが、全く使っていないものもあります。この映画では、家族のストーリーが中心にあって、とても普遍的なテーマを描いています。その意味では、こうした未来を描いた話の中でも、とてもユニークなものだと思います。また、若者たちが「自分は誰なのか」「人間とはどういうものなのか」と考えるきっかけになるとも思うし、描いているのはナヴィの世界ですが、とても人間的なストーリーだと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

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