「清正は心のどこかでは三成を止めてあげたいという気持ちも持っています」新井浩文(加藤清正) 【真田丸インタビュー】

2016年8月23日 / 08:30

 NHKの大河ドラマ「真田丸」で、豊臣家の武闘派の武将、加藤清正を演じている新井浩文。秀吉(小日向文世)への忠義の心に変わりはないものの、石田三成(山本耕史)らと対立する清正。内部崩壊していく豊臣家へのじくじたる思いを語る。

 

加藤清正役の新井浩文

加藤清正役の新井浩文

-清正の三成への感情をどう表現していますか。

 一応「反三成」ということになっていますけど、監督と相談して「清正は(三成の排除や三成に反抗することに)そんなに乗り気ではない」という芝居をやっています。福島正則(深水元基)が「わぁー」と行くのに対して、清正は演技的にはそういうふうにはやっていない。とても微妙なところを攻めている状態です。心のどこかでは三成を止めてあげたいという気持ちも持っている。そういう解釈でやっていました。

-清正はこれまでの戦国ドラマでは固定されたイメージのものが多かったのですが、今回は違いますね。

 中国の三国志にはめちゃくちゃ詳しいのに、日本の戦国武将を知らないのでいろいろ調べはしましたけど、結局は、いろんな説があってどれが正しいのか分からないのが歴史の面白さだと思っています。それを空想でやるのが作りものとしての時代劇の面白さ。まず三谷(幸喜)さんの脚本ありきで、そこから監督と話し合って作っていっています。本当の清正がどんな人物だったのかが分かっていないのが正直なところだと思います。それと清正のイメージという点で言えば、実は先日飲み屋で「歴女」の方に、「真田丸」での清正を「あんなの加藤清正じゃない」ってめちゃくちゃ批判されたんです(笑)。笑って対応しましたが、「固定観念ってこういうことを言うんだな」と思いました。実際(真実が)分かりませんから、彼女もある意味では正しいとも言えますしね。

-大河ドラマを体験したことで何か感じましたか。

 集まってくる俳優が、年齢も違うし、やってきた演技の土台も違うし、芝居のアプローチも違うし、どんな演技がいいのかが分からないことです。年配の人から見たら、これまで見慣れてきた時代劇とは違う、うちみたいなさらっと系の演技をしている人は、学芸会みたいでへたくそだなと思われているかも。そこは難しいなと思いました。

-「真田丸」の共演者の中ですごいと思う人はいますか。

 まず山本さん。場慣れされているのか所作がすごいんですよ。ずっと山本さんを見てやっていました(笑)。それと堺(雅人)さんは基本的には無言なんですが、「あのシーンはああいうふうにやった方がいいんじゃないかな」ってスタッフにさりげなく言ってくれて、周りの共演者がやりやすいようにしてくれる。堺さんのあの気配りはすごいですね。

-三谷さんの脚本はいかがですか?

 お仕事するのは初めてなんですが、三谷さんの映画は好きだったから、「真田丸」も面白いですね。それと、この間、紫式部と清少納言が登場する三谷さんの二人芝居「紫式部ダイアリー」を見に行ったんですが、分かりやすく、現代語でやる人と時代劇っぽくやる人を明確に分けて絡ませているところが、「真田丸」と似ているなと感じました。

-初めてということで、三谷さんお得意の当て書きはまだされていないのですか。

 全然されていません。うちは(清正みたいに)酒癖が悪くないし(笑)。そもそもめちゃめちゃ酒には強いし、品のある飲み方をしますからね(笑)。でも、先日ある会合で三谷さんにお会いした時、その日誕生日だった人にケーキを渡すタイミングで拍手をしたら、三谷さんから「新井くんって、何かすごく女っぽい拍手をするね」って言われたんですよ。「(外見から受けるイメージと)全然違うんだね」って感心されていました。

-では、今後は当て書きが期待できるかもしれないですね。

 かもしれないですね。そうだとうれしいです。


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

尾上眞秀「お母さんやおばあちゃんが喜んでくれました」寺島しのぶの長男が舘ひろしとの共演で映画初出演『港のひかり』【インタビュー】

映画2025年11月14日

 日本海沿岸の小さな漁師町を舞台に、元ヤクザの漁師・三浦と目の見えない少年・幸太という、年の離れた孤独な2人の絆を描くヒューマンドラマ『港のひかり』が、11月14日から全国公開中だ。  主演に舘ひろしを迎え、『正体』(24)の俊英・藤井道人 … 続きを読む

『物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家の物語』(7)神々がすむ土地を語る

2025年11月14日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼玉田永教と神道講釈  銭湯の湯け … 続きを読む

ハリウッド・リメイク決定!インド発ノンストップ・アクション!「日本の皆さんにも楽しんでいただけるはず」ニキル・ナゲシュ・バート監督『KILL 超覚醒』【インタビュー】

映画2025年11月13日

 40人の武装強盗団が、ニューデリー行きの特急寝台列車を襲撃! 刀を手に乗客から金品を奪う強盗団のリーダー、ファニ(ラガヴ・ジュヤル)は、大富豪タークルとその娘トゥリカ(ターニャ・マニクタラ)を人質に取り、身代金奪取をもくろむ。だがその列車 … 続きを読む

上白石萌歌「小さなお子さまから大人の方まで幅広く届いてほしいと思います」『トリツカレ男』【インタビュー】

映画2025年11月11日

 何かに夢中になると他のことが目に入らなくなってしまうジュゼッペ(声:佐野晶哉)は、街の人々から「トリツカレ男」と呼ばれている。ある日、ジュゼッペは、公園で風船売りをしているペチカに一目ぼれし、夢中になるが…。作家・いしいしんじの同名小説を … 続きを読む

八木莉可子「相反する二面性をどちらも大切にしたい」「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」【インタビュー】

ドラマ2025年11月10日

 草なぎ剛主演の月10ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜午後10時)。第3話で強烈なインパクトを残したゆずは(八木莉可子)の母(雛形あきこ)が、再びHeaven’s messenger … 続きを読む

Willfriends

page top