【映画コラム】新旧監督の話題作が並んで公開に『TOKYOタクシー』『金髪』

2025年11月22日 / 08:00

『金髪』(11月21日公開)

(C)2025 映画「金髪」製作委員会

 ある公立中学校で、市川(岩田剛典)が担任するクラスの数十人の生徒たちが髪を金色に染めて登校してきた。生徒たちは校則への抗議を主張し、学校中は大騒ぎになる。活動の発起人である板緑(白鳥玉季)に「なぜ髪を染めてはいけないのか」と問われ、「校則だから」としか答えることができない市川。この騒動はネットニュースに取り上げられ、教育委員会や文科省、さらには総理大臣まで動き出す騒動へと発展していく。

 日本独特のおかしな校則、ブラックな職場環境、暴走するSNSやネット報道といった社会問題を背景に、未熟な中学校教諭が、生徒たちに振り回されながらも成長していく姿をシニカルに描く。監督は坂下雄一郎。本作は今年の東京国際映画祭で観客賞を受賞した。

 現在39歳の坂下監督は、大阪芸術大学、東京芸術大学大学院を経て、2010年に監督デビューを果たした。

 地方の選挙戦をシニカルな視点で描いたコメディー『決戦は日曜日』(22)で注目されたが、その時に「風刺的なやり方をするのであれば、体制側というか、中にいる人間の側から描いた方が皮肉になると感じたし、物語としても面白くなると思った」と語っていた。

 今回はその対象が校則や学校になっているが、コメディーを使って社会問題を提起するという姿勢は同じだ。

 ではこの姿勢を貫くのかと思いきや、お互いの心と体が入れ替わったまま15年の歳月を過ごす男女を描いたファンタジー映画『君の顔では泣けない』も11月14日に公開され、違うタイプの映画が撮れることも示した。今後が楽しみな監督の一人だ。

(田中雄二)

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