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『リバー、流れないでよ』(6月23日公開)
京都・貴船の老舗料理旅館「ふじや」で仲居として働くミコト(藤谷理子)は、別館裏の貴船川のほとりにたたずんでいたところを女将(おかみ)のキミ(本上まなみ)に呼ばれ、仕事に戻る。だが2分後、ミコトは、また川のほとりに立っていた。
そしてミコトだけではなく、女将や番頭、仲居や料理人、宿泊客たちも、皆同じ時間がループしていることに気付く。2分たつと時間が巻き戻り、全員が元いた場所に戻ってしまうが、記憶は引き継がれる。彼らは力を合わせてタイムループの原因究明に乗り出すが、ミコトは複雑な思いを抱えていた。
冬の京都・貴船を舞台に、繰り返す2分間のタイムループから抜け出せなくなった人々の混乱を描いた群像コメディー。上田誠率いる劇団「ヨーロッパ企画」によるオリジナル長編映画の第2作。上田が原案・脚本、同劇団の映像ディレクター・山口淳太が監督を務めた。
去年公開された『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(22)は会社、こちらは旅館という違いこそあれ、どちらも限定された場所での集団タイムループという点で一致する。
とはいえ、この映画は2分間という短い間隔でのタイムループという設定が斬新だし、動線の悪さという古い旅館の弱点を逆手に取って、タイムループを面白く見せるための舞台として活用している点も秀逸だ。
同じ時間を何度も繰り返すタイムループは、描き方によっては、まさに“ネバーエンディング・ストーリー”にも成り得る面白さがあるし、何度も同じシーンを撮り直すことができたり、後で編集もできる映画向きの素材だともいえる。
だから、例えば『恋はデジャ・ブ』(93)『タイムアクセル12:01』(93)『ターン』(01)『ミッション:8ミニッツ』(11)『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)などの佳作が生まれている。
また、最近では、ホラーに転用した『ハッピー・デス・デイ』(17)、主人公を加えた3人が巻き込まれる『パーム・スプリングス』(20)、アクションゲーム感覚の『コンティニュー』(21)など、新機軸のタイムループものも登場してきた。
この映画は、タイムリープの原因がいささか安易なのが気になったが、時間SFコメディーとしては、上出来の部類に入ると感じた。
(田中雄二)