女性監督による2本の佳作『Coda コーダ あいのうた』『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』【映画コラム】

2022年1月20日 / 07:15

『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』

(C)2021, LETTERBOX FILMPRODUKTION, SÜDWESTRUNDFUNK

 恋愛から距離を置く女性学者に、彼女の理想のパートナーとなるように設計されたアンドロイドが恋を仕掛ける様子を描いた、ドイツ映画『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』。

 ベルリンの博物館でくさび型文字の研究をしているアルマ(マレン・エッゲルト)は研究資金を稼ぐため、ある企業が実施する極秘実験に参加する。

 それは、ドイツ人女性の恋愛データおよびアルマの性格とニーズに完璧に応えられるようにプログラムされた高性能AIのトム(ダン・スティーブンス)と3週間暮らすというものだった。

 抜群のルックスと穏やかな性格、豊富な知識を持つトムは「実験期間内にアルマを幸せにする」というミッションを遂行するため、過去の傷から恋を遠ざけてきたアルマの心を何とか変えようとするが…。

 監督・脚本は女優としても活動しているマリア・シュラーダー。スティーブンスが製作も兼任しているので、AIという形を借りて、自分の魅力を最大限に表現しようとしている節がうかがえる。

 さて、人型ロボットが登場する映画は多いが、人間とAIの恋という点では、主人公(ホアキン・フェニックス)がAIと恋に落ちる『her/世界でひとつの彼女』(13)が思い浮かぶ。

 ただ、あのAIは“声(スカーレット・ヨハンソン)だけ”というところに、逆に想像力をかき立てられるものがあったのだが、今回は、ちょっとしたしぐさ以外は、見た目はほとんどAIらしさがなく、イギリスなまりのドイツ語を流ちょうに話す美男が相手なので、SFというよりも、普通の恋愛劇を見ているような気分になった。

 ただ、ヒロインのアルマの性格描写に曖昧なところが多く、共感しずらいところがあり、見終わった後で、もやもやしたものが残るのは否めないのだが、それは男性目線故で、女性が見たら共感できるものなのだろうかと思った。このあたり、最近のジェンダーを扱った映画の評価は本当に難しいと感じる。

(田中雄二)

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