【映画コラム】主人公・零を取り巻く個性豊かな群像劇『3月のライオン 前編』

2017年3月18日 / 16:21
(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

 本作は、17歳の将棋のプロ棋士、桐山零(神木隆之介)と、彼をめぐる人々の物語。羽海野チカの原作漫画は先にテレビアニメ化されたが、今回は、大友啓史監督が『るろうに剣心』に続いて二部作として映画化した。

 幼いころに事故で両親と妹を失い、父の友人の棋士(豊川悦司)の家に引き取られ…という過酷な運命を背負った零が、三姉妹をはじめとする、下町の人々の人情に触れて癒やされていく姿が印象的。その絶望と希望のコントラストの妙が本作の見どころの一つになる。月島など東京の下町の風情が残る街でのロケも効果的だ。

 それに加えて、本作は零の将棋に懸ける情熱やライバルたちとの関係を描き込んでいく。羽生善治、村山聖をモデルにしたとも思える、宗谷(加瀬亮)や二海堂(染谷将太)が登場するため、昨年公開された『聖の青春』とイメージが重なる部分があるのは否めない。

 ところが、『聖の青春』が羽生と村山の関係に絞って描いていたのに対して、本作は零と相対する複数の棋士の存在を際立たせているため、個性豊かな群像劇を見ているような気分にさせられる。

 特に対局シーンは表情やしぐさで状況を表現する役者の腕の見せどころ。神木、伊藤英明、佐々木蔵之介らが健闘を見せ、将棋のルールを知らなくても、彼らが必死に戦う姿に思わず興奮させられ、盤上の格闘技とも呼ばれる将棋の真髄を垣間見る思いがする。

 それぞれに心の傷や屈託を持った登場人物たちが、この後どのような変化を見せるのか…。4月22日に公開される後編も楽しみだ。(田中雄二)


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