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黒澤明監督の名作時代劇『七人の侍』(54)と、舞台をメキシコに移してリメークしたジョン・スタージェス監督の西部劇『荒野の七人』(60)を下敷きにした『マグニフィセント・セブン』が公開された。
悪徳実業家のボーグ(ピーター・サースガード)が支配するローズ・クリークの町。夫を殺されたエマ(ヘイリー・ベネット)は、賞金稼ぎのサム(デンゼル・ワシントン)をはじめとする7人(クリス・プラット、イーサン・ホーク、イ・ビョンホンら)のガンマンを雇い、ボーグに立ち向かう、というおなじみのストーリーが展開する。
『荒野の七人』の原題は「マグニフィセント・セブン」。だから本作は正当なリメーク作ではあるのだが、それ以前にも『続・荒野の七人』(66)『新・荒野の七人 馬上の決闘』(69)『荒野の七人・真昼の決闘』(72)と続編が3本作られている。さらに、SF『宇宙の七人』(80)やアニメ映画『バグズ・ライフ』(98)などといった亜流も含めるときりがない。トム・クルーズ主演でのリメーク作の製作も何度か企画されていた。
なぜ、手を変え品を変え、こうまで作り続けられるのかと言えば、それはひとえに、個性的なメンバーが集まる面白さに加えて、彼らが見知らぬ者たちの苦境を救う中で、自己や無私の心意気に目覚めていくという設定が見る者の胸を打つからだろう。
今回、西部劇の伝統を重んじながら、そこに現代性を加えるという難題に挑戦したアントワーン・フークア監督は「重要なのは『七人の侍』と『荒野の七人』のDNAに忠実であること。どちらの映画も描いているのは人間ドラマ。壮大なバトルシーンもあるけど、根幹を成すのは男たちが集まって正しいことをするということだ」と語っていたから、期待も大きかった。
雇い主は女性、リーダーは黒人で、メキシコ人、先住民、アジア系など、多民族性を持ったメンバー構成、あるいはド派手なアクションや銃撃戦などはいかにも現代流だが、それらはさほど大きな問題ではない。
一番の問題はリーダーたるサムの動機にある。ここでは書かないが、それによって『七人の侍』と『荒野の七人』のDNAに忠実とは言い難いものになってしまった。
『荒野の七人』のテーマソングを流すなど、随所に往年のファンをニヤリとさせるようなネタを仕込んでいただけに、この結果は残念でならない。(田中雄二)