【映画コラム】生きることとは何か、死ぬこととは何かを考えさせられる『ボクは坊さん。』

2015年10月24日 / 19:30
(C) 2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会

(C) 2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会

 実在の住職が自らの体験を基につづったエッセーを原作とした『ボクは坊さん。』が公開された。

 祖父の突然の死をきっかけに、四国八十八カ所霊場の第57番札所、栄福寺の住職となった光円(伊藤淳史)。24歳で“坊さん”となった主人公の迷いや不安、周囲の人々との関係を描きながら、生きることとは何か、死ぬこととは何かを考えさせる佳作に仕上がっている。

 前半は「お坊さんあるあるネタ」で笑わせながら、僧侶も普通に女性を好きになり、人生に迷い、酒に酔い、時には羽目を外すこともあるということを知らせていく。

 一転、後半は、事故で意識不明となった幼なじみ(山本美月)や檀家の長老(イッセー尾形)の死などを乗り越えて、光円が一人前の住職に成長していく様子が描かれる。光円という役と伊藤自身が一体となって成長しているかのようにも見える自然体の演技が素晴らしい。

 また、本作は『ALWAYS 三丁目の夕日’64』(12)などで助監督を務めた31歳の真壁幸紀の監督デビュー作に当たる。寺や僧侶に関するハウツー映画としての面白さは、周防正行の諸作を思わせるものがあるが、真壁監督の新人らしい嫌味のない爽やかな作風には好感が持てる。

 さり気なく挿入される空海=密教の教えが、人生のヒントとなるところもいい。四国や高野山の美しい風景も見どころだ。(田中雄二)


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