【芸能コラム】生活保護、出産…。社会の問題と向き合う漫画原作ドラマ 「健康で文化的な最低限度の生活」「透明なゆりかご」

2018年8月14日 / 15:30

 一方、NHK総合で毎週金曜午後10時放送中の「透明なゆりかご」は、町の小さな産婦人科を舞台に、妊娠や中絶といった出産をめぐる光と影に向き合った物語。第4回「産科危機」(8月10日放送)では、出産直後に妊婦が死亡した事件をめぐり、医師や看護師、残された夫が葛藤するさまが、繊細なタッチで描かれた。

 原作は沖田×華の『透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記』。ギャグ漫画を思わせるシンプルな絵ながら、看護助手のアルバイトをしていた作者自身の経験に基づき、生命と真摯(しんし)に向き合った物語は心に深く残る。

 独特の雰囲気が持ち味の作品だけに、ドラマ化に当たっては、そのテイストをいかに実写で再現するかに腐心したはず。だが、主演の清原果耶以下、瀬戸康史、原田美枝子、水川あさみら、俳優陣の人間味豊かな演技、巧みな脚本、繊細で柔らかな映像と音楽により、原作同様の温かさにあふれた作品となっている。

 生活保護や妊娠・出産の問題は、今日的なテーマであるにもかかわらず、当事者以外には理解されにくく、逆に関心があっても、第三者が当事者に深い話を聞くことは難しい。その点、この2作品はテレビドラマという形を取ることで、それらの問題を広く世間に知らしめる好機となった。その裏にはもちろん、入念なリサーチに基づいて描かれた原作の存在がある。そう考えると、改めて日本の漫画文化の懐の深さを思い知らされる。

 これらの問題に少しでも関心がある人には、ぜひドラマを見ることをお薦めしたい。さらに、ドラマを見て興味が湧けば、原作にも手を伸ばしてみてほしい。原作もドラマも優れた作品であり、双方に触れることで、それぞれの魅力がより引き立つと考えるからだ。(井上健一)

「透明なゆりかご」(C)NHK

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