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グルメドラマ花盛りの昨今。4月からは、ブームの草分け的存在の「孤独のグルメ」と、26歳OLの一人酒ライフをつづった「ワカコ酒」が、それぞれseason6とseason3に突入した。人気ジャンルとなったグルメドラマは次々と新作が登場するが、続編が制作される作品はそれほど多くはない。そんな中、この二作品が長く続いている理由はどこにあるのだろうか。
個人で輸入雑貨商を営む井之頭五郎が、仕事で訪れた町で出会った店でさまざまな料理を味わうのが「孤独のグルメ」。一方、「ワカコ酒」では、26歳のOL村崎ワカコが、仕事帰りに立ち寄った店で一人酒を楽しむ姿が描かれる。
年齢、性別の他、下戸の五郎さんに対して、酒飲みなワカコという違いはあるものの、いずれも働く大人が一人で飲み食いする点では共通している。また、最近ではストーリーや主人公のキャラクターに趣向を凝らした作品も少なくない中、この二作は調理場面と食事場面にじっくりと時間を割いたグルメドラマの王道とも言える作りが特徴だ。
必要最小限に抑えたドラマ部分は、主人公が飲み食いに対するモチベーションを高めていく過程に焦点を絞っている。主人公が群れず、余計なドラマを描かないからこそ、誰もが自分を主人公に置き換え、疑似体験するように食事のシーンを楽しむことができる。
さらに、その食事シーンをより引き立てるのが、持ち味を生かした主演俳優たちの気持ちの良い食べっぷりだ。井之頭五郎役の松重豊は、大柄な体にふさわしく、男らしい豪快な食べっぷりを披露。当初は、食べ過ぎではないかと驚くほどだった食事量も、今では“五郎さん”の味となっている。
一方、20代の女性らしいかわいらしさと落ち着いた雰囲気で、おちょこ片手にいとおしむように料理を口に運ぶのがワカコ役の武田梨奈。満足したワカコの口から飛び出す「ぷしゅ~」の決めぜりふもお約束だ。
それぞれ本気で食事をしており、リアクションがリアルな上に、その表情に重ねて料理の魅力を伝えるモノローグも効果的。武田の場合、本物の酒を飲んでいることも特筆しておきたい。
二人ともこれが連続ドラマ初主演だったが、おのおのの好演もあって長く続くうちにそれぞれの代表作となった。以前から名バイプレーヤーとして活躍していた松重は、本作以降、すっかり“五郎さん”の呼び名が定着。瓦割のCMやアクションのイメージが強かった武田も、“酒飲みのワカコ”という新たな顔を手に入れた。俳優としての魅力を引き出したことも、番組の人気と無縁ではないだろう。
放送日時は、どちらも毎週金曜日の深夜。午後11時30分から「ワカコ酒」、0時12分から「孤独のグルメ」と、二本立てで見ることができる(関東地方の場合)。週末の夜、リラックスして楽しむにはちょうどいい。
ちなみに、放送局はそれぞれ、同じ系列のテレビ東京とBSジャパン。こうなると期待したくなるのが、外国のテレビドラマでよく見られる、異なる作品の登場人物が共演するクロスオーバーだ。ワカコと五郎さんが同じ店で顔を合わせる…。そんな夢の共演をぜひ実現してはくれないだろうか。
(井上健一)