【芸能コラム】綾瀬はるかに転機をもたらすハードなアクション 「精霊の守り人 悲しき破壊神」

2017年2月3日 / 17:02
「精霊の守り人 悲しき破壊神」

「精霊の守り人 悲しき破壊神」

 綾瀬はるかにとって、アクションは転機をもたらす存在である。

 そう言うと、首をかしげる人が多いかもしれない。現在公開中の『本能寺ホテル』などコメディーで活躍する一方、カンヌ国際映画祭に出品された『海街diary』(15)では、四姉妹の長女役を好演。今や日本の映画やテレビドラマに欠かせない存在となった綾瀬だが、広く定着しているのは、やはりやコメディーや落ち着いたドラマのイメージだろうか。

 だが、NHKで現在放送中の大河ファンタジー「精霊の守り人 悲しき破壊神」(毎週土曜日午後9時)を見れば、アクションが綾瀬のもう一つの武器であることは一目瞭然だ。主人公の女性用心棒バルサに扮(ふん)して激しく剣を交え、馬上で格闘を繰り広げる迫力満点の姿からは、コメディーなどで見せる天然キャラは想像できない。事務所の公式プロフィールにも「中学3年生の時、中国地区の駅伝大会に出場。バスケットボールなどスポーツは何でも得意です」とあるように、もともと運動神経はいいのだ。

 しかも、綾瀬がアクション作品に出演するのは、これが初めてではない。かつて勝新太郎らが演じた『座頭市』の主人公を女性に置き換えた『ICHI』(08)で、盲目の剣の達人・市を演じた綾瀬は、仕込みづえを使った殺陣に挑戦。黒澤明監督の『影武者』(80)や『乱』(85)に参加してきた殺陣師の久世浩指導の下、すべてのアクションにスタントなしで取り組む意欲を見せた。

 さらに同年公開のラブファンタジー『僕の彼女はサイボーグ』(08)にも、VFXを交えたアクション要素が多分に含まれていた。人間を超越したパワーとキュートな魅力を兼ね備えたサイボーグ美女は、綾瀬のほかには考えられないハマり役だ。

 それから9年。「精霊の守り人」で、綾瀬のアクションはさらに進化。アクション指導を担当する辻井啓伺の言葉によると、バルサのアクションには、「和・洋・中それぞれの武術の利点を取り入れ、綾瀬さんには、すべての基本からやっていただきました」(『NHK放送90年 大河ファンタジー 「精霊の守り人」SEASON1 完全ドラマガイド』KADOKAWA刊より)とのこと。

 綾瀬自身も、16年3月放送の「スタジオパークからこんにちは」に出演した際、「ボクシング的なものから回し蹴りまで」と、それまで体験したことのないトレーニングの密度の濃さを語っていた。

 当初、アイドル女優と見られていた綾瀬は、『ICHI』『僕の彼女はサイボーグ』に出演した08年ごろから、徐々に演技面で認められるようになってきた。その後、銃を手にし、“幕末のジャンヌ・ダルク”新島八重を演じたNHK大河ドラマ「八重の桜」(13)を経て、「精霊の守り人」にたどり着く。

 こうして振り返ると、アクションは綾瀬のキャリアの節目に存在してきたように見える。「精霊の守り人」でハードなアクションを繰り広げる綾瀬は、ひたすらシリアスでワイルド。今まで見たことのない姿ながら、文句なくかっこいい。その力強さは、必ずや綾瀬に新たな転機をもたらすに違いない。(井上健一)


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