【映画コラム】もはやSFとは呼べない『her/世界でひとつの彼女』と『トランセンデンス』

2014年6月28日 / 18:55

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 片やジョニー・デップ主演の『トランセンデンス』は“超越”を意味する。テロリストに撃たれ、死すべき運命だった科学者(デップ)の意識を、妻(レベッカ・ホール)がコンピューターにインストール。意識だけの存在となった彼が、オンラインとつながって世界中のあらゆる情報や技術を手に入れ、人類を超越した“神”のような存在になっていくさまを描く。

 本作のテーマは、果たして心までインストールできるのか、肉体のない永遠の命とは何かということ。『her/世界でひとつの彼女』とは形こそ違え、人間とコンピューターとの関わりについて考えさせるという点では同じだ。変装が大好きなデップが、今回は大半をモニター画面の中に固定された形で演じるという離れ業を披露している。

 さて、これまで不老不死、人工知能、ロボット、クローン(複製)といったテーマを扱った映画は、SF(サイエンスフィクション)の名の下に、生命への冒涜(ぼうとく)、創造者が恐れを抱きながらも研究や開発を進める矛盾、あるいは命や知能を与えられた者の悲哀などを描いてきたが、それはあくまでもまだ“先の話”であり、一種の寓話(ぐうわ)や警鐘の類として捉えることができた。

 ところがコンピューターや科学の急速な発達で、これらはより現実味を帯びてきた。と言うよりも、すでに秘密裏に存在している可能性すらある。今回紹介した2作は、こうしたテーマをSFとは呼べなくなる日がすぐそこまで来ていることを暗示している。(田中雄二)

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