エンターテインメント・ウェブマガジン
NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。7月17日放送の第27回「鎌倉殿と十三人」では、2代目鎌倉殿・源頼家(金子大地)の下、主人公・北条義時(小栗旬)を含む宿老13人による合議制の誕生が描かれた。
13人の合議制誕生を描く上では、創作上の大きなポイントが二つある。まず一つは、「なぜ、どのようにして13人が選ばれたのか」。そしてもう一つが、「13人の合議制の目的は何だったのか」だ。
脚本の三谷幸喜が「これが原作のつもりで書いている」と語る鎌倉幕府公式の歴史書『吾妻鏡』には「13人で合議を行うことになった」と書かれているだけで、彼らが選ばれた理由と過程、その目的は記されていない。よって、この二つをどう扱うかが、作り手の腕の見せどころとなる。では、本作はそれをどう描いたのだろうか。
まず一つ目の「なぜ、どのようにして13人が選ばれたのか」に関して。本作ではこれを北条家と比企家の勢力争いと位置づけ、合議の実権を握ろうとする北条時政(坂東彌十郎)と比企能員(佐藤二朗)が互いに味方を増やしていった結果、当初5人だったメンバーが、13人に膨れあがっていく様子が描かれた。
とはいえ、普通に考えるとこの過程は「一人ずつ声を掛けていく」だけに過ぎず、下手をすれば単調な展開になりかねない。
ところが、本作では時間にして約15分、1話の3分の1近くに当たるその場面を、誘いに乗る者や断る者、わが道を行く者など、これまで積み上げてきた御家人たちのキャラクターを生かしつつ、ユーモアたっぷりの見せ場に仕上げてみせた。
北条方から合議制のメンバーに誘われ、「難しいことは、俺は駄目だぞ」と及び腰だった和田義盛(横田栄司)が、時政の妻・りく(宮沢りえ)から「和田殿の勢いが欲しいの」と持ち上げられた途端、「お手伝いいたしましょう!」と乗っかる場面など、演者同士の息もぴったりだ。
また、その過程で能員から「意見が割れたときに、わしらの味方をしてくれればよい。あとは、餅でも食っていびきでもかいてなさい」と言われる安達盛長(野添義弘)や、親友の時政から頼まれ、合議のメンバーに加わる父・義澄(佐藤B作)に「要は数合わせでしょう」と告げる三浦義村(山本耕史)にも注目したい。
“13人の合議制”といっても、実際に13人全員がそろって合議を行った史実は残っていないらしく、ただのユーモアに見えるこれらのせりふも、その点を踏まえて生み出されたものに違いない。
そして、二つ目の「13人の合議制の目的」については、現在、「経験の浅い頼家を補佐するため」という説と、「独断に走る頼家の権力を制約するため」という説の二つが有力視されている。これに関して本作では、どちらか一方を採用するのではなく、相反する二つの説を両立させる離れ業をやってのけた。
つまり、義時の発案で「頼家を補佐するために合議制を立ち上げる」という形で物語を進めながらも、その結果成立した合議制に頼家が「御家人たちが自分の権力を奪おうとしている」と反発する姿を描いてみせたのだ。
これにより、義時たち御家人の視点に立った場合と頼家の視点に立った場合で、それぞれの説が成り立つこととなった。