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とはいえ、そういう人間的な行き違いは、時代を問わず起こりえるもの。そこで、もう一つ例として挙げておきたいのが、第17回、義経の名を後世に伝える逸話“鵯越の逆落とし”を巡る義経と梶原景時(中村獅童)とのやり取りだ。
一ノ谷の戦いの際、急な崖を馬で駆け下りて平家を奇襲した“鵯越の逆落とし”の話を聞いた後白河法皇は、義経を賞賛。これに「それぐらいやらなければ、奇襲とは申せません!」と景気よく応じた義経だが、それは事実ではなかった。
後でその点を景時から「法王さまは誤解しておられます」と指摘された義経は、「構わぬ。(中略)歴史はそうやって作られていくんだ」と断言する。
真偽に関わらず、自分に都合のいい話を広めようとする義経のこの姿勢は、あたかもフェイクニュースが生まれる瞬間を見ているかのようだった。
800年前の源平合戦を描いた物語が、現代社会の問題を浮き彫りにする。もちろん、本作の主題がそこにあるわけではないだろうが、そういう意外な共通点を見いだせることも、の物語の一つの魅力であり、楽しみ方といえるのではないだろうか。
(井上健一)