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そしてもう一人、義時との関係で注目したいのが、頼朝の妻となる姉・政子だ。ご存じの通り史実では、頼朝は鎌倉幕府成立後、ほどなくして世を去る。政子はその後、義時と二人三脚で幕府の屋台骨を支え、「尼将軍」と呼ばれるほどの存在になっていく。
演じる小池栄子は、数々の作品で変幻自在な演技を披露してきた巧者。第1回では、頼朝の気を引こうとする姿をコミカルに演じていたが、「帝王」に変貌していく小栗=義時と共に、平凡な武家の娘から尼将軍に上り詰めていく政子を、説得力を持って表現してくれるはずだ。
これから小栗=義時は、大泉=頼朝や小池=政子とかかわる中で、どのように帝王へと変貌を遂げていくのか。そして、その過程で彼らがどんな空気感を生み出していくのか。
前述した「麒麟がくる」や「青天を衝け」などでも見られたが、共に濃密な時間を過ごした役者同士が生み出す唯一無二の空気感は、物語に豊かな味わいをもたらし、大きな魅力となっていた。
記者会見やパブリック・ビューイングなど、出演者がそろう場を取材していると、これまでも互いに共演経験がある小栗、大泉、小池の間には、打ち解けた空気が漂っていることが分かる。
だが、その関係がそのまま役に反映されるとは限らない。むしろ、気心の知れた3人だからこそ、役を通して濃密な時間を過ごす中で、今までにない空気感を生み出していく可能性も十分にある。彼らがこれからどんな空気感を生み出し、私たちを魅了してくれるのか。物語の行方が気になるとともに、そんな期待も膨らむ物語の船出だった。
(井上健一)