【エンタメコラム】最新技術で迫力を増した映像と音響、時を重ねて深みが加わった物語。『銀河鉄道999』ドルビーシネマ版を劇場で体感!

2022年1月15日 / 13:12

 アニメーション映画の名作『銀河鉄道999』が、最新技術でドルビーシネマ版として生まれ変わり、全国7館で順次公開中。松本零士原作のテレビシリーズの放送開始後、劇場版として新たに製作され、1979年の日本映画ナンバーワンヒットとなった歴史的作品だ。

(C)松本零⼠・東映アニメーション

 機械の体を手に入れ、永遠の命を得た裕福な機械人間が支配する地球。貧しい生身の人間が虐げられた生活を送る中、たった一人でたくましく生きる少年・星野鉄郎(声:野沢雅子)は、謎の美女メーテル(声:池田昌子)に導かれ、銀河鉄道999号に乗って銀河の彼方アンドロメダへと旅立つ。その途中、鉄郎はさまざまな人々との出会いを重ねていくが…。

 SFファンタジー的設定の下、伝統的なロードムービーのスタイルで描いた少年の冒険物語はロマンにあふれ、製作から40年以上たった今も変わらぬ輝きを放っている。しかも今回のドルビーシネマ版は、最新技術を用いたクリアな画質と迫力の音響を得て、現代でも通用する見応え十分の仕上がりとなった。

 特に、立体音響“ドルビーアトモス”にパワーアップされた音響の効果は抜群だ。999号が銀河を疾走するシーンやキャプテン・ハーロック(声:井上真樹夫)の宇宙船“アルカディア号”の飛翔シーン、クライマックスの大スペクタクルなどが、最新映画と比べても遜色ない迫力で体感できる。

 それは、例えるなら、古いモノクロ映像をカラー化する感覚に似ているかもしれない。戦前の古いモノクロ映像をカラー化したものをテレビなどで見ると、自分には無縁だと思っていた大昔の出来事が、時間的な距離を飛び越えてぐっと身近に感じられる。

 今回のドルビーシネマ版を見て、その感覚を思い出した。そういう意味では、主人公・鉄郎の成長を描いた物語は、もともと少年少女に向けたものであることから、若い世代が初めて本作に触れるいい機会だともいえる。

 こうして、最新の上映環境に適応する一方、40年以上の時を経た物語は、公開当時を知るファンも、自身が年齢を重ねたことでより深く味わえるようになったはずだ。

 例えば、旅の途中で鉄郎が出会う人々の中には、夢見ていた機械の体を手に入れながらも、必ずしも幸せとはいえない人生を送る者が少なくない。

 生身の人間だった頃の自分への未練を断ち切れず、自分を含む生身の体を捨てた人間たちの“抜け殻”を見守りながら一人寂しく生きるシャドー(声:藤田淑子)。愛する機械伯爵(声:柴田秀勝)の求めに応じて体に改造を重ねた結果、自分自身を失い、“時間の魔女”となってしまったリューズ(声:小原乃梨子)…。

 
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