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冒頭に記したやり取りの後、第一回冒頭で描かれた乗馬中の慶喜を栄一が走って追いかける初対面の映像が挿入されたが、2人の関係の始まりは、このときの慶喜の「言いたいことはそれだけか」というそっけない一言だった。
それが、50年近い年月の中で、共に幾多の困難を乗り越えてきた結果、「生きていて、よかった。話をすることができて、よかった。楽しかったな」と和やかに語り合うに至った。
吉沢自身も事前のインタビューで「この作品のテーマを語っている場面」と振り返っていたが、栄一と慶喜の最後の対面が私たちの胸を打つのは、そんなふうに「生き抜く」ことでたどり着ける未来の希望を見せてくれたからではないだろうか。
次はいよいよ最終回。伝記編さんを通じて慶喜の思いを受け止めた栄一が、この物語にどんな形で幕を引くのか。この1年の物語に思いをはせながら、しっかりと見届けたい。(井上健一)