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それを実践した例として、木綿を生産する領内の農民たちに「今後は一橋家が木綿を今までよりも高い値で買い上げる」と告げた場面が挙げられる。
当初は「お役人がわしら百姓をもうけさせようなんて思うはずあるかいな」と不審がられたものの、実際に物産所を開設し、銀札を発行して木綿を買い上げる仕組みを整えたことで、農民たちの信用を得た。
やがて、実業家となる栄一は、今後さらなる活躍を見せるはず。その目指す商売の在り方を示したのがこの回というわけだ。その思いを胸に、どんな道を歩んでいくのか。栄一の生涯を見据える上で、重要なキーワードとなるに違いない。今の世にも通じるこの言葉を心にとめつつ、その行方を見守っていきたい。(井上健一)