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本コラムでは、これまで数多くの俳優たちの活躍を紹介してきたが、2016年の締めくくりとして、印象に残った俳優を振り返ってみたい。
今年最も話題を集めたテレビドラマと言えばNHK大河ドラマ「真田丸」と「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)だが、その両作品に出演したのが星野源だ。「真田丸」の徳川秀忠も「逃げ恥」の真面目一筋な独身サラリーマンも、内野聖陽、新垣結衣といった対になる共演者との対照的な存在感が際立っていた。ミュージシャンや作家などマルチに活躍し、俳優としての活動も10年を越える星野が、ついに大ブレークを果たしたと言っても過言ではないだろう。
一方、若手俳優の中でも目覚ましい活躍を見せたのが菅田将暉。映画、テレビドラマを併せて、1年で10本以上の作品に出演。『ピンクとグレー』のトリッキーな演技に始まり、『ディストラクション・ベイビーズ』の粗暴な高校生や「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(日本テレビ系)のモデル兼作家の知的な大学生まで幅広く演じて見せた。17年はNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」で主人公・井伊直虎(柴咲コウ)の後継者・井伊直政を演じる予定。どのような活躍を見せてくれるのか、楽しみに待ちたい。
また、連載では取り上げられなかったが、キラリと光る存在感を示したのが、菅田も出演した「ラヴソング」(フジテレビ系)でヒロインを演じた藤原さくら。演技初挑戦ながら、児童養護施設育ちで吃音(きつおん)に悩みつつ音楽に打ち込む女性という難役をみずみずしく演じ切った。ドラマ自体も丁寧に作られていた上に、自ら歌った主題歌「soup」のヒットもあり、その存在を強く印象付けた。
さらに今年は、若手俳優の活躍ではアニメーション映画への出演も忘れてはならない。記録的大ヒットが続く『君の名は。』を筆頭に、興行と批評の両面で成功を収めた作品が続き、「アニメの当たり年」と言われた。
第17回では、その中から『君の名は。』、『映画 聲の形』、『この世界の片隅に』に声の出演をしている神木隆之介、上白石萌音、松岡茉優、のんを取り上げた。いずれも主人公もしくは重要な役を演じており、ヒットに大きく貢献した。中でも『この世界の片隅に』ののんは、片渕須直監督が「脚本の本質を直感的につかんでいました」(劇場用パンフレット掲載のインタビューより)と語る名演を披露。素朴さの中に力強さを秘めたその語りは、戦時下の日常を過ごす主人公に生き生きとした息吹を吹き込んだ。
17年は「とと姉ちゃん」(NHK)の高畑充希が主人公の声を演じる『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』が3月に公開予定。さらに、現時点ではキャスト未発表ながら、米林宏昌監督の『メアリと魔女の花』(夏公開予定)も、過去の傾向を見ると俳優が起用される可能性は高い。現状を踏まえて考えると、アニメーション映画における若手俳優の起用は今後も続くのではないだろうか。
こうして振り返ってみると、今後が楽しみな俳優は数多い。17年も「おんな城主 直虎」、『銀魂』(7月公開予定)に出演予定の柳楽優弥や、巨匠マーティン・スコセッシ監督の『沈黙 -サイレンス-』(1月21日公開)に出演する小松菜奈などが、映画やテレビドラマを盛り上げてくれるに違いない。
(ライター:井上健一):映画を中心に、雑誌やムック、WEBなどでインタビュー、解説記事などを執筆。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社)