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祭りナンバーを終えても、勝敗について結論を出せない巴形薙刀。「少し時間をください」と刀剣男士に伝え、そこから自身の出自についても考えを及ばせる。今回、芝居パートでは、一貫して、この巴形薙刀の自身のルーツへの苦悩と、それゆえに感じている不完全さがテーマとして扱われていた。巴形薙刀は、物語のない巴形の集まりだ。自身が何者であり、どう生きるべきなのか。歌って踊る華やかなステージの中にも、「刀ミュ」が一貫して描いてきた普遍的なテーマが息づいている。
ステージは続いて、ライブパートに突入する。圧巻の歌声と、完璧なダンスで魅せる髭切・膝丸は「Just Time」を披露。そのパフォーマンス力の高さに、2019年に公演が決定している「双騎出陣」に、いやが応でも期待が高まる。
印象的だったのは、小狐丸と三日月宗近による「Time line」だ。ステージに上がった小狐丸は「ご心配をおかけしました。おかげさまで、さらに大きくなって小狐丸、戻って来ました」と詫びた。「阿津賀志山異聞2018 巴里」に出演できなかったことへの複雑な思いが垣間見え、思いの込もった歌に胸を動かされた。
さらには、18振りの刀剣男士たちが入り乱れ、「Don’t worry,don’t worry」「Gateway」「mistake」とメドレーで歌唱。その後には、にっかり青江と千子村正による、大人なムード漂う「解けない魔法」のアレンジバージョンまで披露された。「解けない魔法」といえば、加州清光の楽曲だ。この公演には加州清光は出演していないからこその演出だが、新鮮さを伴って披露されたことに驚いた。
そして、武道館の会場替わり曲は、小狐丸による「Versus」。テンポのいい楽曲に会場のボルテージも上がり、会場は黄色のペンライトに染まった。
ここで、特筆しておきたいのが、武蔵坊弁慶(田中しげ美)、源義経(荒木健太朗)、源頼朝(冨田昌則)、榎本武楊(藤田玲)ら、歴史上の人物のキャストたちによる歌唱と和太鼓のパフォーマンスだ。本公演でも物語のキーを握る人物として、重要な役どころを担うキャストたちだが、この公演においても、絶妙なスパイスとなり、観客たちを盛り上げた。本公演でも印象深かった「To the North」、そして「白刃の月」はさすがの一言だった。
この日は、5曲の新曲を含む、全34曲が歌われ、会場を終始熱狂させた。次の出陣は大みそか。彼らが夢見たステージでの最高のパフォーマンスを楽しみに待ちたい。
(取材・文/嶋田真己)
ミュージカル『刀剣乱舞』公式サイト https://musical-toukenranbu.jp
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