【芸能コラム】草刈正雄&上白石萌音 2016年活躍の2人が、個性派グルメドラマに挑戦「幕末グルメ ブシメシ!」&「ホクサイと飯さえあれば」

2017年2月7日 / 13:46
「幕末グルメ ブシメシ!」の草刈正雄

「幕末グルメ ブシメシ!」の草刈正雄

 近年のテレビは、グルメドラマが花盛り。改変期ごとに新番組が登場する盛況ぶりで、各局とも趣向を凝らした個性的な作品を送り出している。1月から放送が始まった2作品には、それぞれ2016年の大ヒット作で活躍した俳優が出演しているのが特徴だ。

 まず初めに紹介するのが、「幕末グルメ ブシメシ!」(NHK BSプレミアム 毎週火曜日午後11時15分放送)。時は幕末。妻子を故郷に残して単身、参勤交代で江戸にやって来た高野藩士・酒田伴四郎(瀬戸康史)が、食を巡る人々の悩みを解決していくユーモアあふれる人情ドラマである。江戸時代の食生活をうかがい知ることができるのが、グルメドラマとしての面白さだ。

 原作は土山しげるのコミック『勤番グルメ ブシメシ!』(リイド社刊)。原作では、実在の武士・酒田伴四郎が書き残した日記に基づいて日常の食生活を描いているが、ドラマ化に当たっては人情ものの要素を追加するなど大幅にアレンジ。藩主・松平茂照が、謎の中間・惨助に変装してこっそり街に繰り出すという設定はドラマ版ならでは。

 この茂照を演じているのが、「真田丸」の真田昌幸役が好評を博した草刈正雄である。威厳ある藩主としての茂照と、変装して町人のように振る舞う惨助を巧みに演じ分け、その二面性はどことなくつかみどころのなかった昌幸を思わせる部分も。正体を唯一知る伴四郎との掛け合いも軽妙で、草刈が乗って演じていることが、その表情から伝わってくる。

 一方、現代の東京・北千住を舞台に、大学進学で上京してきた“ブン”こと山田文子が、ウサギに似たしゃべるぬいぐるみ“ホクサイ”と共に繰り広げるアイデア満載の自炊生活を描いたのが「ホクサイと飯さえあれば」(MBS毎週日曜日深夜0時50分/TBS毎週火曜日深夜1時28分放送)だ。原作は鈴木小波の同名コミック(講談社刊)。

 主人公のブンを演じるのは、昨年8月の公開から記録的大ヒットが続く『君の名は。』でヒロイン宮水三葉の声を担当した上白石萌音。『舞妓はレディ』(14)や『ちはやふる』二部作(16)で見せた上白石の親しみやすい雰囲気が下町・北千住によくなじみ、ほのぼのとしたドラマに仕上がっている。

 本作がユニークなのは、本来、グルメドラマに欠かせない食べる場面がない点だ。代わりに、1人暮らしならではの生活感あふれる調理シーンや想像力豊かなブンの説明が、見る者の食欲をかき立てる。料理のおいしさが手に取るように伝わる上白石の幸せそうな表情は見ものだ。

 以上2作品、内容や料理の取り上げ方こそ異なるものの、俳優の生き生きとした演技が見どころの一つである点は共通している。シーズン6の制作が決定した松重豊主演の「孤独のグルメ」(テレビ東京)や、シーズン3が4月放送予定の武田梨奈主演の「ワカコ酒」(BSジャパン)のように、一話完結が基本のグルメドラマは、シリーズ化される可能性も十分にある。

 俳優の持ち味を生かした今期の2作品も、シリーズ化されれば両者のキャリアにおいて重要な位置を占めることになるかもしれない。両作品が今後どのような展開を見せるのか、“夜食テロ”にあらがいつつ見守ることになりそうだ。(井上健一)


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