小林聡美、名作ドラマ「岸辺のアルバム」 舞台化は「今の時代も共感できる」【インタビュー】

2026年2月19日 / 08:00

 小林聡美が主演する舞台「岸辺のアルバム」が、4月3日から上演される。本作は、数々の名作ドラマを世に残した山田太一が原作・脚本を務め、1977年に放送された連続ドラマを舞台化。一見平和で平凡な中流家庭の崩壊と再生を描く。ドラマでは八千草薫が演じた専業主婦の母・田島則子を演じる小林に本作への意気込みを聞くとともに、2025年に還暦を迎えた心境や今の目標などを聞いた。

小林聡美【ヘアメーク:磯嶋メグミ/スタイリスト:藤谷のりこ】 (C)エンタメOVO

-最初に本作のオファーを受けたときの心境を聞かせてください。

 名作と言われるドラマの初の舞台化ということで、大変なこともきっと多いだろうと思いましたが、私も大好きなドラマだったので挑戦してみようと思いました。

-大変そうだと感じたのはどういった理由からですか。

 あれほどの熱量のあるドラマを2時間ほどの舞台で表現するというのは、それだけでチャレンジだと思いました。スタッフの皆さんもいろいろな仕掛けを考えるのもきっと大変な作業なのではないかなと。

-ドラマ版をご覧になって、本作にどんな印象を持ちましたか。

 家族というものをつなぎ留めるために、主婦である女性がもがいていた時代のような気がします。新しい時代の流れの中にも、理想的な家族の形というのがあって、(則子にも)当時の誰もが考える「幸せな家族」の形がある。それが幸せだと信じているからこそ、それを保っていきたいと思うんですよね。そして、そこから生まれる1人の人間としての心の揺らぎや、ちょっとした魔が隣り合わせにあるゾクゾクした感じは、きっと50年たった今も共感できるのではないかと思います。

-今回演じる則子という人物については、どのように感じましたか。

 主婦のかがみのようなお母さんです。八千草薫さんが演じていらしたので、皆さんの印象にも刻まれていると思います。でも今の時代に上演するお芝居だし、ドラマとの違いをあえて楽しむというのも面白い見方かなと思います。なんとか持ちこたえようと頑張っている姿やそこで生まれる心の隙間など、共感していただけるところがたくさんある人物でありたいです。

-原作のドラマは1977年に放送されました。放送から50年近くたった今、舞台として上演することについては、どのような思いがありますか。

 家族って、たまたま家族になっただけとも考えられますよね。生物学的にはDNAを引き継いでいる人間同士ですが、経験したり感じたりすることは親、兄弟姉妹であっても、全く違います。一緒に暮らしてきたというだけでチームのような感覚がありますが、別々の人生を歩んでいる人たちが成長をするためにチームを組まされているところもあるような気がします。そう見ると、50年前の家族の話も今の家族に通じるものがあるように思います。親には分かってもらえないような事情が子どもたちにはあり、子どもには言えないような事情が親たちにはある。仕事で忙しくて夫が家にいないというのも今でもあることです。なので、きっと共感できるところがたくさんあると思います。そして、一度崩壊してしまった家族が新しい一歩を踏み出すとき、それは前とはまた違った形になるのではないでしょうか。脈々と続く家族の不条理さは、今の時代も共感していただけると思います。

-小林さんご自身が思い描く幸せな家族の形とは?

 なんですかね…距離感を保ちながらも、味方であることかな。何かをして欲しいとかではなく、何かあったときに「この人たちはきっと味方でいてくれる」という安心感があることでしょうか。でも、多くを期待するところではないような気もしていて。家族もそれぞれ自分の人生がある。そう考えると難しいですが…味方であって欲しいですね。

-ところで、2025年には還暦を迎えられ、ある意味では節目の年だったのではないかと思いますが、ご自身では何か変化を感じていますか。

 あえて、行きたいところには行って、やりたいことはやって、欲しいものは買う1年にしようと思って過ごしました。

-どんなところに行かれたのですか。

 韓国が多かったですね。周りにK-POPが好きな人も韓流ドラマが好きな人もいて、私もようやくドラマや映画を見始めたんです。そうしたら、韓国の芸能や文化に興味が湧いてきて。ドラマの舞台になった済州島に行ったり、いろいろなところを回ってきました。

-「あえて」ということはこれまではあまり旅行に行くことはなかったんですか。

 旅行は好きですが、このところどうしてもいろいろと考えてしまいがちで、「今の時期に行ったらその後の仕事が大変だろうから、先に延ばそうかな」とか、考え過ぎてしまうことが多かったので、「したい」と思ったらすぐにすると決めた1年でした。これからもそんなふうにフットワーク良くありたいですね。

-現在、生活していく中で、そしてお仕事をする中で大切にしていることは?

 自分を追い込みすぎないことです。いい感じにいい加減でいるのが良いと思っています。自分に厳しくて、今よりも先のことを考えて不安になって、いらないモヤモヤを抱えてしまったり。そういうことはもう気にしないでぼちぼちやりなさいと自分に言ってあげるようなお年頃になりました。

-そうすることが楽しく生きることにつながるんですね。

 でも、自分に厳しく、落ち込んだり、不安になったりした時期があったからこそだと思います。30代、40代はどうしてもそういう時期なのだと思いますし、年を重ねることで自然とユルくなっていくものなのかなと。もっと年を重ねたら自分にもっと甘くなるかもしれないですね(笑)。

-これから先の俳優としての目標は?

 自分が少しでも面白いと思えるようなことにフォーカスして、軽やかに、新しいことにも首を突っ込んでいきたいと思っています。もうそれほど長い時間でもない気がしますが、いつまでも楽しんで仕事をしていきたいです。

-新しいこととは具体的に何かありますか。

 仕事ではないですが(笑)、お料理をきちんと習ってみたいです。昔のお母さんが作っていたような総菜は、やっぱり日本人の体に一番合っている気がします。そうした家庭料理を勉強し直してみるのはどうだろうと思っています。やっぱりこれからは健康が第一になるので、食べることはおざなりにしてはいけないと思うので。

-最後に、公演を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

 ドラマをご覧になったことがある方もきっとたくさんいらしてくださると思いますが、ドラマを見ていない方、演劇にあまりなじみがない方もどうぞ気軽に「人力のエンターテインメントってどんな感じなんだろう」と面白がりに来ていただければうれしいです。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 舞台「岸辺のアルバム」は、4月3日(金)~26日(日)に都内・東京芸術劇場シアターイースト、5月1日(金)~4日(月・祝)に大阪・松下IMPホールで上演。

 

舞台「岸辺のアルバム」


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