吉田恵里香氏「寅子の視点では描けなかったものを、どれだけ描けるか」「虎に翼」スピンオフに込めた脚本家の思い「山田轟法律事務所」【インタビュー】

2026年2月23日 / 18:51

 2024年に放送されたNHKの連続テレビ小説「虎に翼」。女性として日本で初めて法曹界に飛び込んだ佐田寅子(伊藤沙莉)の歩みを描いた物語は大きな反響を呼ぶと共に、第62回ギャラクシー賞テレビ部門大賞に輝くなど、高い評価を受けた。そのスピンオフ作品「山田轟法律事務所」が3月20日よる9時30分、NHK総合で放送される。

 今回の主人公は、寅子の明律大学女子部時代の同期生・山田よね(土居志央梨)。彼女が轟太一(戸塚純貴)と共に立ち上げた山田轟法律事務所の設立にまつわる「虎に翼」本編では語られなかったエピソードが明らかになる。

 放送に先駆け、「虎に翼」に続いて脚本を担当した吉田恵里香氏が、今回のスピンオフに込めた思いを語ってくれた。

(C)NHK

-「虎に翼」ファン待望のスピンオフですが、今回、山田よねを主人公にした理由を教えてください。

 私自身はどの登場人物に対しても「スピンオフを書きたい」と思っていたので、誰が主人公でも書くことは可能でした。その中である意味、「虎に翼」本編の主人公・寅子と対になる存在と言えるのが、よねと(寅子の義姉で、専業主婦として家庭を支えた)花江(森田望智)です。どちらを主人公にするか考えたとき、「虎に翼」が謳っている“リーガルエンターテインメント”という特徴を生かせるのは、よねだろうと。また、多くの視聴者から「よねと轟の活躍を見たい」というお声もいただいていましたし、私自身もそれを見たいという思いもありました。そんなことから、スタッフと打ち合わせを重ねる中でも、特に異論なくスムーズに決まりました。

-今回、よねを主人公にするにあたって、どんなことを意識しましたか。

 「虎に翼」本編では、寅子との対比として、よねを「曲げない、折れない、間違えない人」として描きましたが、そんな人間はいません。よねだって、折れそうになったことがあるはずで、そこからどうやって今の自分を築き上げたのか。折れたらアイデンティティーを失い、自信喪失しそうな瀬戸際で、折れないために必死になる。そんなときも、メソメソしたり、落ち込んだりするのではなく、怒りをガソリンに変え、燃え上がるパワーを得る。そんなよねの姿を描くことは、強く意識しました。よね役の土居さんにも、「作品を大事にしてくださる方」という印象を持っていたので、「こういうよねを演じる土居さんが見たい」というラブレターのような気持ちで書いています。

-よねと轟の物語を描く上で、終戦直後の混乱期を舞台に選んだのはなぜでしょうか。

 よねと轟は、「虎に翼」本編でも比較的多く描かれていた人物なので、今回は“寅子が知らない”=“視聴者が知らない”部分を描くことに意味があると考えました。そこで、終戦直後の混乱の最中、よねが戦争ですべてを失った轟に手を差し伸べ、二人がタッグを組んで「山田轟法律事務所」を立ち上げるまでにこういうことがあった、という物語にしようと。

-なるほど。

 また、「虎に翼」は「すべて国民は、法の下に平等であつて…」と「平等」を謳った日本国憲法第十四条の精神を柱に掲げた作品です。だからこそ、“生活のために体を売る女性たち”など、本編で取りこぼしてしまった人々を描きたいという私自身の思いもありました。終戦直後の寅子は、夫を亡くし、幼い子を抱え、自分自身が苦労していたこともあり、買い物のために闇市を訪れたとしても、体を売って生きる女性たちと交流を持つ余裕はなかったんですよね。そんなふうに、「寅子の視点では描けなかったものを、どれだけ描けるか」ということが今回、自分に課した課題でもありました。

(C)NHK

 
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