エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

2025年9月18日 / 08:00

 世界的なスター指揮者のティボ(バンジャマン・ラべルネ)は、突然白血病を宣告され、ドナーを探す中で、生き別れた弟のジミー(ピエール・ロタン)の存在を知り、彼の隠れた音楽的な才能にも気付く。兄弟でありながらも異なる運命を歩んできた2人。ティボはその不公平を正そうと、ジミーを応援することを決意する。運命の再会を果たした兄弟が、さまざまな音楽とともに未来へと歩き出す姿を描いた『ファンファーレ!ふたつの音』が9月19日から全国公開される。本作のエマニュエル・クールコル監督に話を聞いた。

エマニュエル・クールコル監督(c) Kostas Maros

-まず、この映画のユニークなアイデアはどこから浮かんだのでしょうか。

 10年以上前にシナリオのコンサルタントとして北フランスに行きました。そこで吹奏楽団をやっている人たちと出会い、彼らがつましい社会環境の中で共に音楽をやっている姿に胸を打たれて、いつかこの話を映画にしたいと思いました。それをどのようにして語ろうかと考えたところ、大衆的な吹奏楽団とエリート的なオーケストラを対立構造として描いてみてはどうか。そこに異なるバックグラウンドでそれぞれが音楽をやっている兄弟のカルチャーショックみたいなものを加えたらどうなるのかというアイデアが浮かび、それを映像化することにとても興味が湧きました。

-ティボとジミーの言葉遣いの違いが印象的でしたが、エリートと労働者との階級差みたいものが表現されているのでしょうか。

 2人の学歴や話し方、属する社会階級の違いには意識的にコントラストをつけました。ティボは品のある美しいフランス語を話し、ジミーはちょっと誇張しているところはありますがシンプルなフランス語を話す。2人の社会的、文化的な環境の違いが言葉遣いにおのずと表れてくるようにしました。2人の俳優が醸し出す雰囲気やルックス、彼らの食事の仕方、洋服の着方、まなざしの向け方、そうした違いが、彼らが属している階級を表すように演出をしました。言葉遣いもその一つでした。

-ティボとジミーとの違いはもちろん、一流オーケストラと炭鉱の楽団、ジャズとクラシック、吹奏楽とジャズといった音楽を通した対照の妙がすごく出ていたと思います。最後にラベルが工場の音からヒントを得て作曲した「ボレロ」を持ってきて、その対照が融合するような表現をしていましたが、そうした流れは最初から意図していたのでしょうか。

 ジミーがジャズについてすごく詳しいところは、ティボにとっては少し意外に映ったかもしれません。クラシック音楽の偉大なアーティストは大体ジャズも好きなので、ティボがジャズを好むのはそれほど驚くことではないのですが、ジミーのような労働者階級の人でジャズが好きというのはちょっと意外性のあることなのです。それと同時に、有名なクラシックの指揮者のティボがダリダのポピュラーなダンス音楽が好きというのも意外な一面です。つまり、社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるということをそうしたエピソードで示しました。そして、ラストを「ボレロ」を使ってそれらがフュージョンする、一体化するというシーンにしたのは、「ボレロ」は有名なクラシック音楽であるのと同時に、誰もが知っているという意味ではポピュラー音楽でもあるということです。そうした、ひょっとしたら交わることがなかったものが融合しているのが「ボレロ」で、それを使って映画を終えるというアイデアは、最初のプロジェクトからありました。

 
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