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グローバルな広がりを見せるKカルチャー。日韓国交正常化60周年を記念し、6月28日に大阪市内で上演された「職人の時間 光と風」は、数ある韓国公演の中でも異彩を放っていた。文化をただ“見せる”のではなく、伝統×現代、職人×芸人、工芸×舞台芸術――異なる領域を交差させ、一つの世界を編む。越境を志す演出家イ・インボさんに、Kカルチャーのこれからを聞いた。
駐大阪韓国文化院主催の創作公演「職人の時間」の会場で話す舞台演出家イ・インボさん
韓国の伝統的な美術・音楽・舞踊を一つにまとめて今回の作品をつくりましたが、それを日本で初めて上演することになり、日本の観客の皆さんがどう受け止めるのか、とても興味がありました。今回の公演は、二人の職人が主役の構成だったので、お二人の世界観をしっかりと感じ取っていただけたらうれしいですし、どう伝わったのか、とても気になります。
テーマでありコンセプトは、扇子づくりの扇子匠キム・ドンシク先生と、螺鈿漆器の螺鈿匠パク・ジェソン先生です。扇子匠の先生が扇子をつくる際の体の「動き」や、扇子そのものが持つ「運動性」。それが舞踊や音楽でどう表現できるかを追求しました。螺鈿匠の先生に関しては「光」で表現しようと思いました、螺鈿漆器を手にした時の「光」の反射を舞台上でどう表すかに挑戦し、「光」の動きをパフォーマンスに落とし込んでいます。
扇子匠キム・ドンシクさんとその周囲で繰り広げる「風」を表現したダンス
螺鈿匠パク・ジェソンさん
私は「リキッドサウンド」というパフォーミングアーツ団体の代表です。韓国の伝統芸術をベースに、伝統遊戯と現代舞踊のコラボ、あるいはインスタレーションアートとのコラボなど、さまざまなジャンルとのコラボを行っています。
今回が初めてでした。昨年8月に全州(チョンジュ)の国立無形遺産院で別の作品を上演した際、そのステージを気に入っていただいて、「職人と一緒に何かやってみませんか」と声をかけていただいたのがきっかけです。美術作品には時間という概念がなくずっと存在し続けますが、音楽や舞踊といった舞台芸術作品は上映時間が終わるとなくなってしまう芸術なので、その両者をどう融合させ、伝えていくかが最大の悩みでした。
いくつか候補があったのですが、この二つが対照的だったからです。扇子匠の先生は「削り続ける」ことで完成へと近づく。一方、螺鈿匠の先生は「貼り続ける」ことで完成に至る。減らすことと足すこと、その対比が面白く、公演としても効果的だと思い、この二つに決めました。
実は最初、ものすごく大変でした。私たちはまだ若く職人の域ではありませんが、職人の先生方は長年の経験を積み重ねてきています。“匠の精神”が分かれば今後の作品づくりにも役立つだろうと、少しでも先生方から学ぼうと思いながら作業をしていました。この経験のおかげで、作品づくりに対する理解や姿勢がより深まったと思いますが、すぐに次のコラボを考えるのはちょっと難しいかもしれません。大変だったので…。
やはり、50〜60年積み重ねてこられた先生方のことを、私たち30〜40代の世代が表現することの難しさです。「果たして自分たちがそこに触れてもいいのか」という葛藤もありました。ただ、舞台に立った演者は、サムルノリ(打楽器のアンサンブル)などを自分たちなりの“匠の精神”で演奏していて、そうした若い表現者たちが、これからも伝統を引き継ぎ、発展させていく。そういうメッセージも込めたいと思いました。
伝統楽器センファン(笛)やコムンゴ(琴)に合わせた優雅な動きから、電子音に合わせたコミカルな踊りまで多彩にこなす踊り手
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