【映画コラム】岡田准一主演で現代と昭和前半の若者像を交差させた『永遠の0』

2013年12月21日 / 19:07

(C)2013「永遠の0」製作委員会

 岡田准一を主演に迎え、百田尚樹のベストセラー小説を映画化した『永遠の0』が21日から公開された。

 司法浪人の佐伯健太郎(三浦春馬)は、祖母の死に伴い、実の祖父・宮部久蔵(岡田)の存在を知る。自身の進路に迷う健太郎は、太平洋戦争の終戦間際に特攻隊として出撃し、帰らぬ人となった宮部のことが気に掛かり、彼の戦友たちを訪ねて話を聞くことにする。

 本作は、特攻隊として戦死したにもかかわらず臆病者とさげすまれた祖父の秘密を孫が探るというミステリー仕立てで、現代と昭和前半の若者像を交差させた。この手法は、来年1月に公開される山田洋次監督の新作『小さいおうち』とも重なる部分がある。今や戦中という特殊な時代を若い観客に知らせるためには“現代からの視点”を織り交ぜることが不可欠になってきているのかもしれない。

 また、今夏話題を呼んだ宮崎駿監督の『風立ちぬ』もそうだが、ゼロ戦という存在を突き詰めて考えると、飛行機としての性能の良さと戦闘機=戦争の道具という二律背反に陥る。さらに今映画で戦争を語ろうとすると、さまざまな立場の声を反映させなければならず、結局は焦点がぼやけてしまうという難しさもある。

 その点、本作は、初めはりりしい軍服姿で登場した岡田が、戦況が悪化する中で次第に追い詰められ、すさんでいく姿と、祖父の人生を知るうちに人間的に成長していく孫という対照の妙を示すことで、若い世代が戦争について考えるきっかけを与える映画になっている。

 本作は、かつて東宝が「8.15シリーズ」として製作した数々の戦争映画の流れをくむが、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズなどでVFX(特撮)とドラマとの融合に力を注いできた山崎貴監督作品だけに、ゼロ戦の飛行場面や米軍機との空中戦などは過去のミニチュア撮影や光学合成を超えたリアリティーを持って迫ってくる。そこも大きな見どころだ。(田中雄二)

  『永遠の0』
配給:東宝
公式サイト:http://www.eienno-zero.jp/

 


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