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京極夏彦の大人気小説『百鬼夜行』シリーズ。その中でも最高傑作の呼び声が高い『魍魎の匣』が舞台化される。戦後間もない昭和20年代後半を舞台に、シリーズの中心人物で「つきもの落とし」を副業にし、営む古本屋の屋号にちなんで「京極堂」と呼ばれる中禅寺秋彦を演じるのは、役者としても活躍しているEXILE/EXILE THE SECONDの橘ケンチ。ビジュアル撮影終了直後に、主演を務める橘に原作や、公演に懸ける思いなどを聞いた。
衣裳は紫の着物で、原作を読んでいたときのイメージに合っていて、しっくりきました。京極堂はシリアスな人物のイメージがあったので、常に何かを考えているとか、眉間の辺りにシワが寄っているとか、つかみどころのないような人物をイメージしながら撮ってもらいました。なので、ちょっと伏し目がちにしたり、目線をそらしてみたりというものを多めに入れています。
読ませる力がすごい小説です。妖怪は出てきませんが、「魍魎」とは一体何かを示していて、それは人間同士のすれ違いや思い違いとか、そういう隙間に「魍魎」という存在が現れるんじゃないかと感じました。決して明るい話ではないですけど、人間と向き合わされる感じがすごくあって、その感じは舞台で表現していきたいです。
そういう運命なのかなと思うこともあります(笑)。「幽劇」は見ている人がスカッとするような分かりやすい内容でしたが、本作は物語の深みや厚みというものがすごくあります。それは僕にとっても挑戦な感じがしていて、自分をより深く、暗く掘り下げないといけないと思っています。でも、その中に救いを出さなければいけないし、それを暗い世界でもがきながら探していくという作業は地道ではありますけど、楽しみです。この作品に出演することによって、何年後かの自分の表現者生活にすごく生きていくなと思っています。
プレッシャーがないとは言えないです。本当に反響が大きくて、原作ファンの方が本当に多いんだと改めて感じました。そういう方々に舞台の面白さを知ってほしいですし、そこでいい意味で期待を裏切ってみたいです。もちろん原作の世界を壊さずにですが。
どういう生まれで、どういうふうに育ってきたらこうなるんだろう、みたいな出自が見えないんですよ。頭もいい人でしょうし、人とは違う何かを持っているし、でも、だからこそ彼なりの闇とかもきっとあるわけじゃないですか。そういうものをこれから解き明かして、京極堂を徹底的に解明したいです。
京極先生が、“京極堂”と名付けるぐらいだから、自分を投影しているところもあるのかなという気もしています。5月末に京極先生にお会いできそうなので、そのタイミングでそういうところも探ってみたいです(笑)。そのほかにも、京極堂のイメージや、なぜ人間の抽象的な概念を「魍魎」という形で描こうとしたのかも質問してみたいです。
妖怪が出てくるわけでもないですし、舞台を見終わったときに、お客さまにはこれが「魍魎」だというハッキリとした正解がなくて、それぞれが感じることが正解になるのかなと今は思っています。でも、それはいい意味で考える余地を残しているんじゃないでしょうか。
まずは台本を読み込むことです。京極堂はすごくしゃべる役柄なので、せりふを覚えてしゃべってみたときに、きっと何か分かってくることがあるだろうなと思っています。そのタイミングが来るのを待ちます(笑)。演出の松崎史也さんからも「せりふをめっちゃしゃべってもらいます」と言われているので、覚悟しています(笑)。