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錦織圭、大坂なおみが活躍するテニスの全米オープンもたけなわの時、1980年のウィンブルドン選手権決勝、ビヨン・ボルグ対ジョン・マッケンローの死闘をクライマックスに、2人のそれまでの道のりや葛藤を描いた『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』が公開された。
今年は、女子選手のビリー・ジーン・キングと男子選手のボビー・リッグスの試合を描いた『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』も先に公開されており、実録テニス映画の当たり年となった感がある。
まず、スベリル・グドナソンとシャイア・ラブーフが、若き日のボルグとマッケンローを見事に再現していることに驚かされた。その2人が躍動する試合のシーンは、監督のヤヌス・メッツがカメラワークやアングルを工夫して、見事な臨場感を生み出している。それを見ていると、当時、実際の試合を衛星中継で見た興奮がよみがえってきた。
そんな本作は、『ラッシュ/プライドと友情』(13)のF1レーサー、ジェームス・ハントとニキ・ラウダにも似た、対照的なライバル同士の関係の妙が見どころだが、同時に、“皇帝と悪童”、“氷と炎”など、正反対のように言われたボルグとマッケンローが、実は直情型で短気なところなどはよく似ていたということも明かされる。
それ故、少年時代の情緒不安定なボルグの姿を見ていると、感情の抑制について考えさせられるところがあるし、真の自分を隠し続けたボルグが、疲れ果てて26歳という若さで引退したのもうなずけるのだ。
ところで、70年代末から80年代初頭にかけてのテニス界は、この2人にジミー・コナーズを加えた、いわゆる三つどもえの様相を呈していた。82年のウィンブルドン決勝では、ボルグを退けて世界ランク1位となった前年覇者のマッケンローとコナーズが4時間15分の熱戦を繰り広げ、コナーズが8年ぶり2度目の優勝を飾っている。そんなことを思い出すと、本作の続編として、マッケンロー対コナーズも見てみたくなる。