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実話を基に映画化したスティーブン・スピルバーグ監督の最新作『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』が3月30日から公開される。先に公開された『ザ・シークレットマン』や本作のような、過去の政治スキャンダルを描いた映画が続けて作られる背景には、トランプ政権への不信感があると思われる。
1971年、ベトナム戦争が泥沼化し、反戦の機運が高まる中、米国防総省(ペンタゴン)が作成した、ベトナム戦争に関する極秘文書が流出する。そこには、4人の歴代大統領がひた隠しにした“ある秘密”が記されていた。ワシントン・ポストの編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)は、ニューヨーク・タイムズのスクープ記事に対抗するため、残りの文書を入手して、公表しようと奔走するのだが…。
実はこの映画の主人公はブラッドリーではなく、メリル・ストリープが演じるワシントン・ポストの社主キャサリン・グラハムであり、彼女の米新聞社初の女性社主としての葛藤、報道の自由と友人(マクナマラ国防長官)の立場との板挟みに悩む姿、などが描かれていく。
そして、グラハムとブラッドリーの、対立から報道のパートナーへと変化していく関係や、記者たちの動静を通して、アメリカ映画が好んで描く“ジャーナリスト魂”を浮かび上がらせる。
また、そうしたドラマとしての魅力に加えて、複数の電話を使ったやり取りや、時間制限のある中で、記事の執筆、校正、割り付け、写植という手作業を経て、新聞印刷の輪転機が回るまでの緊迫感を活写して映像的な興奮も与えてくれる。こうしたドラマと映像の魅力を共存させる職人技に、映画の申し子であるスピルバーグの本領が発揮されている。