「徳川家のために物事を冷静に運ぶ才を見ていただけたら」尾美としのり(榊原康政)【「おんな城主 直虎」インタビュー】

2017年9月17日 / 20:50

 再び進撃を開始した武田信玄(松平健)が井伊谷に攻め寄せ、井伊谷城は炎に包まれた。激動する戦国の世は、井伊家再興を諦め、還俗した直虎(柴咲コウ)の運命を翻弄していく。そんな中、徳川家重臣・榊原康政が登場。後に「徳川四天王」の1人に数えられ、成長した虎松=万千代(菅田将暉)とも深く関わっていくことになる人物だ。演じる尾美としのりが、康政役の見どころ、今後の万千代との関わりについて語った。

 

榊原康政役の尾美としのり

-出演した感想はいかがでしょうか。

 大河ドラマに途中から参加するのは大変だと思いましたが、身内の者が喜んでくれるので、ありがたく出演させていただきました。康政は“人品最も高し”と言われる人物ですが、僕自身とは全く異なるので、困ったな…と思って、所作指導の橘(芳慧)先生に「どうしたらいいですか?」とお伺いを立てながら頑張っています。

-一足先に登場した高嶋政宏さん演じる本多忠勝は武勇に秀でた武将ですが、康政の見どころはどんな部分でしょうか。

 康政は知略に優れた頭脳派という設定ですが、その一方で武功も立てるなど、剣術もできる人間だったそうです。徳川四天王のまとめ役が康政とも聞いているので、うまくまとめていきたいです。あまり感情的になることのない人物なので、徳川家のために物事を冷静に運ぶ才を見ていただけたら。また、康政は文(ふみ)が得意だったそうなので、手紙を書くような場面では、その辺りの自信を少しのぞかせたりもしています。

-所作やせりふ回しで、気を付けていることはありますか。

 言葉遣いやアクセントが、今まで経験してきたものと違うので大変です。漢字については本読みの時、演出の方に読み方を確認しながらやっています。例えば「戦場」というせりふがあった時、“いくさば”と“せんじょう”のどちらで読むのか、とか。どちらも間違いではないそうですが、「周りは“せんじょう”と言っているので、“せんじょう”にして下さい」といった感じで、少しでも気になることは一つ一つ聞いています。所作についても、康政は殿(家康)の近くまで寄れる立場の人間ですが、“人品最も高し”なので、距離感に気を付けて「ここは行き過ぎでしょうか?」などと確認しながらやっています。

-一つ一つ細かく決まっているようで、大変そうですね。

 そうですね。近くまで寄ってもいいのかもしれませんが、殿を主(あるじ)として立てている人間なので、康政との関係性で殿が大きく見えるようにしたいなと。もし康政が生きていたら、そうするのではないかなと思ってやっています。

-阿部サダヲさん演じる徳川家康の印象はいかがでしょうか。

 家康はこれまで“つかみどころがない古だぬき”というイメージで、ドラマや映画に登場してきました。今回は、徳川家がまだそれほど大所帯ではなく、殿のために頑張ろう、皆で家を大きくしていこうという若い時代を描いています。そんな中、こっちへ流れ、あっちへ流れと右往左往して、気持ちのブレがありながらも、若いなりにどんどん上っていく家康を、阿部さんがとてもチャーミングに演じていらっしゃいます。康政から見たら、すごく人使いのうまい、魅力的な主ですよね。だから、皆が付いていくし、他の家から寝返って仕える者も出てくるのでしょう。

-間もなく、万千代(=虎松)役で菅田将暉さんが登場します。共演した印象は?

 本番での力の出し方がすごいです。万千代役も、喜怒哀楽がよく出ていて、とても魅力的です。それにしても、最近の若い人たちは、自己プロデュース能力に長けていますよね。どうやったらうまくいくのかということをきちんと考えていて、すごくスマートで、本番では「こうなるのか!」というふうに力を出してきますから。僕が若い時は何も考えていなかったので、刺激を受けて「頑張ろう!」という気になります。今さら刺激を受けても遅いのかもしれませんが(笑)。

-将来的には徳川四天王の1人、井伊直政へと出世していく万千代ですが、康政は万千代をどのように見ているのでしょうか。

 初めのうちは、家康に重用される万千代に対して、ねたみのような感情もあります。康政の名前も家康の“康”の字を頂いていますが、まだ大したこともしていない虎松に“竹千代”の“千代”の字を与えると言われた場面は、「何を!?」という気持ちでお芝居をさせていただきました。家康に対しても、新参者の万千代を重用する気持ちが理解できず、「殿、何故でございますか?」という気持ちをほんの少しずつ出しています。とはいえ、“人品最も高し”なので、あまり露骨には出せないところがジレンマです(笑)。

-康政と万千代は、似た部分があるようですね。

 そうですね。今回は、どんどん出世していく万千代のいい見本になればと思っています。ただ、“井伊家再興”という目的がある万千代は、出世欲があって上昇志向が強い人物ですが、康政はどちらかというと自分を殺して徳川家に尽くすタイプ。徳川四天王の中で同じような才を持つ2人ですが、そのあたりの対比も面白いのではないでしょうか。最初のころ、万千代には「鼻持ちならない」という印象を抱いていますが、やがて「見どころがある」と感じて、「一緒に徳川を支えていこう」となっていくので、そういった変化も見てほしいです。その間の万千代の活躍ぶりも見ものです。

―徳川家の面々は酒井忠次役のみのすけさんや本多忠勝役の高嶋さんなど、個性的な方々がそろっています。現場の雰囲気はいかがでしょうか。

 六角さん(精児/本多正信役)も含めたおじさんばかりの中に、菅田くんと井之脇くん(海/小野亥之助役)がいるので、ちょっとかわいそうです(笑)。この間は、スタジオの前室で待機している時、若者チームとおじさんチームに分かれていましたから。本当はおじさんたちが話しかけてあげればいいんでしょうけど、シャイな人間ばかりで(笑)。でも、万千代が出世するにつれて距離感が縮まっていくと思うので、いろいろ話をしていきたいです。

(取材・文/井上健一)


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