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今週は少女たちが躍動する映画が2本公開された。まずはディズニー・アニメーションの最新作『モアナと伝説の海』から紹介しよう。
南の島に暮らす少女モアナは、海の不思議な力によって、島を危機から救う役に選ばれ、伝説の英雄マウイと共に冒険の旅に出るというお話。
本作は、南太平洋(ハワイ、サモア、タヒチ、ポリネシア…)に伝わる神話や伝説に創作を合体させ、新たな物語として構築している。こうした少女の成長物語はディズニーのおはこだけに、安心して見ることができるし、海、波などを違和感なく見せるアニメーション技術の水準の高さを改めて知らされる。
オリジナルの声優は、ハワイ出身の新人アウリィ・カルバーリョがモアナを、元プロレスラーのアクションスター、ドウェイン・ジョンソンがマウイを演じた。ジョンソンのコミカル味が新鮮だ。片や日本語吹き替え版は、沖縄出身の新人、屋比久知奈(やびく・ともな)と歌舞伎俳優の尾上松也が演じたが、こちらもなかなかの好演を披露している。
音楽も、モアナの思いがすべて詰まったような「どこまでも ~How Far I’ll Go~」、マウイが歌う陽気な「俺のおかげさ」など、今回も名曲ぞろいだ。
余談だが、トリックスター、マウイのキャラクターは、小錦、曙、武蔵丸ら、ハワイ出身の巨漢力士たちをほうふつとさせる。相撲の横綱は神のよりしろだと言われるが、彼らはもともと神の末裔(まつえい)だったのか…などと想像してみるのも楽しい。
一方、『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』は、福井商業のチアリーダー部JETSが全米選手権で優勝した、という実話を基に映画化した青春サクセスストーリー。
広瀬すずが『ちはやふる』2部作のかるたに続いて、チアダンスに挑んでいるが、今回も彼女の運動神経の良さが存分に生かされている。笑顔だけが取りえというキャラクター設定も彼女にぴったりだ。
また、広瀬のほか、部員役の中条あやみ、山崎紘菜、富田望生、福原遥らが頑張りを見せる。つまり本作は、実際のチアダンス同様、若手女優たちの素晴らしいチームワークを見るのが楽しい映画なのだ。
鬼顧問役の天海祐希の存在など、昔ながらのスポーツ根性物の要素に、時折漫画チックな笑いを加えているが、大筋はあくまで直球勝負のオーソドックスな青春映画というところが心地良い。それにしても、見る前に全てが分かってしまうような長いサブタイトルは必要なのだろうか?(田中雄二)