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7月も下旬を迎え、一通り出そろった夏期の連続ドラマ。その中から今回は、TBS系で放送中の日曜劇場「仰げば尊し」(日曜午後9時)に注目してみたい。
かつてはプロのサックス奏者だった樋熊迎一(寺尾聰)は、荒れる高校の状況を改善したいと考える校長の小田桐(石坂浩二)に招かれて弱小吹奏楽部の顧問に就任。部員たちと共に全国コンクール出場を目指す。さらに樋熊は、ある事件をきっかけにバンド活動を断念した不良グループを吹奏楽部に入部させようとする…。
往年の大ヒット作「スクール☆ウォーズ 泣き虫先生の7年戦争」(84~85)の吹奏楽版を思わせる正統派の学園ドラマだが、俳優陣の好演がこの上ないすがすがしさを醸し出している。
中でも目を引くのが、生徒役の若手俳優たちの顔ぶれだ。
樋熊と対立する不良グループの5人には、今春のヒット映画『ちはやふる』二部作(16)の真剣佑、カンヌ国際映画祭に出品された『2つ目の窓』(14)で鮮烈なデビューを飾り、『ディストラクション・ベイビーズ』(16)など出演作が続く村上虹郎、「ゆとりですがなにか」(16)で存在感を発揮した北村匠海と太賀、「仮面ライダー鎧武/ガイム」(13)に主演した佐野岳。
一方、吹奏楽部の部員には、『ソロモンの偽証』二部作(15)で注目を集めた石井杏奈、「花子とアン」(14)や『ちはやふる』二部作などでコメディリリーフとして活躍した矢本悠馬など、期待の若手俳優たちがずらりと顔をそろえている。
まだ2話ながら早くもそれぞれの個性が際立っており、今後彼らがどんな活躍を見せてくれるのか、筆者もワクワクしながら見守っている。
その一方、学園ドラマには別の楽しみ方もある。
生徒役として数多くの若手が出演のチャンスを得られる学園ドラマ出演者の中からは、当初無名でも後にブレークするケースが少なくない。
近年、それが顕著だったのが2012年の映画『桐島、部活やめるってよ』だ。高校生を演じた俳優のうち、公開前から知名度があったのは神木隆之介と橋本愛ぐらい。だが、作品が高い評価を受けたことから他の出演者にも注目が集まり、東出昌大、松岡茉優、山本美月、前野朋哉、太賀などが一気に活躍の場を広げた。
他にも、「鈴木先生」(11)を経てNHKの連続テレビ小説「まれ」(15)に主演した土屋太鳳、脇役ではないが「表参道高校合唱部!」(15)ではつらつとした演技を披露し、今年10月放送開始予定の連続テレビ小説「べっぴんさん」に主演する芳根京子なども、学園ドラマが活躍のきっかけとなった。
過去をさかのぼれば、「3年B組金八先生」からは小林聡美、高畑充希、忽那汐里など多数の俳優が世に出ており、学園ドラマにはダイヤの原石が埋もれている可能性が十分にある。「仰げば尊し」に話を戻すと、赤毛の生徒・木部郁夫を演じる藤原薫は、「鈴木先生」の優等生役とは全く異なる雰囲気で、ポテンシャルの高さをうかがわせる。
現在、「仰げば尊し」の他、「時をかける少女」(日本テレビ系)や「こえ恋」(テレビ東京系)といった学園ドラマが各局で放送中。あなたも画面の隅々までチェックして、未来のスターをいち早く見つけてみてはいかが。
(ライター:井上健一):映画を中心に、雑誌やムック、WEBなどでインタビュー、解説記事などを執筆。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社)