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分かります。私もそう思いました。確かにそういう味わいがありますね。最初の撮影が、矢添と2人で、部屋で紅茶を飲んでいるシーンだったんですけど、プレイバックしてモニターを見た時に、フランス映画みたいだと思いました。モノクロ画面のちょっとけだるい雰囲気の中で、哲学が飛び交って、芸術を愛している感じ。でも、くどいところもあり、それが滑稽でもある。本当にフランス映画のようなところがありますね。
そうですね。とてもユーモラスでした。小説を読んでいる時もそういうことがありますよね。想像の中ではモノトーンだったのに急に色が強くなっていったりとか。だから小説を読んでいるような味わいもある作品ですね。
綾野さんは本当に素晴らしかったです。現場に入って、綾野さんの中年の体形や皮膚の感じや、顔をちょっとむくませた感じを見た時に、全部矢添だなと思って。なので、会った瞬間から自分も千枝子になれたところがありました。あとは、私が荒井組は初めてだったので緊張もあったんですけど、綾野さんが、前回の『花腐し』でも荒井さんとタッグを組んでいて、それが本当に素晴らしかったので、そういうところでの安心感もありました。
これまでも脚本家の荒井さんと監督の荒井さんとで、何か印象が変わったことはありましたかと聞かれたことがありましたが、全く変わらなかったです。いつもの荒井さんのままでフラットな感じでした。今回も何かをおっしゃることはあまりなくて、台本に書いてあるので、それを役者がどう解釈して見せてくれるのかを楽しみにされているようでした。とにかく、役者としては荒井さんが書いたせりふを言いたという衝動があるんです。すごく色気があるというか、色が出るというか。せりふがとても芸術的で哲学的で、香り高くて芳醇(ほうじゅん)。それを早く言葉にしたいなと。荒井さんがまた監督をされたら絶対に出たいです。荒井さんの言葉を言いたい。
初めて見るような映画だと思いました。他では見ることができない荒井晴彦作品がまたこの世に出た、誕生したことに感動しました。
こじらせ男の滑稽で切ない愛の行方を皆さんに見届けていただきたいと思います。かっこよく生きたいのだけれど、そうできないダサさの中の愛らしさ。男性ならではの魅力というか、男性という生き物を綾野剛さんが見事に体現しているので。もちろん女性が見ても面白いと思いますし、男性から見ても共感するところがあると思います。
「考え過ぎじゃないの」って言いたいところはありますね。「もっと無心になって」と言いたくなるところはあるんだけど、でもやっぱり言葉を大切にしている人だし、言葉にこだわりを持っている人だと思うし、それでご飯も食べているし、それに救われた人もいるわけだから、しょうがないのかなと思うところもあるけれど、彼のいいところも悪いところも含めて愛らしいなとは思います。
(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2025「星と月は天の穴」製作委員会
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