田中麗奈「こじらせ男の滑稽で切ない愛の行方を皆さんに見届けていただきたいと思います」『星と月は天の穴』【インタビュー】

2025年12月24日 / 13:00

-この映画は、ちょっとフランス映画みたいなところがありましたね。

 分かります。私もそう思いました。確かにそういう味わいがありますね。最初の撮影が、矢添と2人で、部屋で紅茶を飲んでいるシーンだったんですけど、プレイバックしてモニターを見た時に、フランス映画みたいだと思いました。モノクロ画面のちょっとけだるい雰囲気の中で、哲学が飛び交って、芸術を愛している感じ。でも、くどいところもあり、それが滑稽でもある。本当にフランス映画のようなところがありますね。

-全編がモノクロ映像ですが、時々赤が入ってくるシーンも斬新というか、面白かったです。

 そうですね。とてもユーモラスでした。小説を読んでいる時もそういうことがありますよね。想像の中ではモノトーンだったのに急に色が強くなっていったりとか。だから小説を読んでいるような味わいもある作品ですね。

-矢添役の綾野剛さんの印象はいかがでしたか。

 綾野さんは本当に素晴らしかったです。現場に入って、綾野さんの中年の体形や皮膚の感じや、顔をちょっとむくませた感じを見た時に、全部矢添だなと思って。なので、会った瞬間から自分も千枝子になれたところがありました。あとは、私が荒井組は初めてだったので緊張もあったんですけど、綾野さんが、前回の『花腐し』でも荒井さんとタッグを組んでいて、それが本当に素晴らしかったので、そういうところでの安心感もありました。

-荒井監督が脚本を書いた作品には何作か出ていますが、監督作は初めてでしたね。印象はいかがでしたか。

 これまでも脚本家の荒井さんと監督の荒井さんとで、何か印象が変わったことはありましたかと聞かれたことがありましたが、全く変わらなかったです。いつもの荒井さんのままでフラットな感じでした。今回も何かをおっしゃることはあまりなくて、台本に書いてあるので、それを役者がどう解釈して見せてくれるのかを楽しみにされているようでした。とにかく、役者としては荒井さんが書いたせりふを言いたという衝動があるんです。すごく色気があるというか、色が出るというか。せりふがとても芸術的で哲学的で、香り高くて芳醇(ほうじゅん)。それを早く言葉にしたいなと。荒井さんがまた監督をされたら絶対に出たいです。荒井さんの言葉を言いたい。

-完成作を見た感想は。

 初めて見るような映画だと思いました。他では見ることができない荒井晴彦作品がまたこの世に出た、誕生したことに感動しました。

-見どころも含めて、これから映画を見る観客や読者に向けて一言お願いします。

 こじらせ男の滑稽で切ない愛の行方を皆さんに見届けていただきたいと思います。かっこよく生きたいのだけれど、そうできないダサさの中の愛らしさ。男性ならではの魅力というか、男性という生き物を綾野剛さんが見事に体現しているので。もちろん女性が見ても面白いと思いますし、男性から見ても共感するところがあると思います。

-役を離れて見ると、矢添のような男性は女性にはどう映るのでしょうか。

 「考え過ぎじゃないの」って言いたいところはありますね。「もっと無心になって」と言いたくなるところはあるんだけど、でもやっぱり言葉を大切にしている人だし、言葉にこだわりを持っている人だと思うし、それでご飯も食べているし、それに救われた人もいるわけだから、しょうがないのかなと思うところもあるけれど、彼のいいところも悪いところも含めて愛らしいなとは思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2025「星と月は天の穴」製作委員会

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

中川大志、三谷幸喜の最新作は「現代にも通ずる、過去の出来事として片付けられないもの」を描く PARCO PRODUCE 2026「アメリカン・ドリーム」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年8月8日

 三谷幸喜が長年温めていたテーマを豪華キャストで描く、渾身(こんしん)の書き下ろし新作舞台「アメリカン・ドリーム」が8月15日からPARCO劇場で上演される。本作は、1940年代後半のアメリカを舞台に、反共産主義に基づく“赤狩り”によって告 … 続きを読む

【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#韓国人はなぜ「呼称整理」をするのか、「脱出おひとり島」が映す韓国社会

2026年8月7日

▽年齢公開のあとに始まる韓国社会  そして、最終日前夜。  参加者たちはキャンプファイヤーを囲み、打ち解けたおしゃべりの中で、それまで隠してきた年齢と職業を、一人ずつ明かしていく。「実は◯歳です」の一言ごとに、歓声と悲鳴が上がる。年上だと思 … 続きを読む

福原遥「自分の大切な人を大事にして生きていこうと思いました」【インタビュー】『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』

映画2026年8月6日

-細田佳央太さんと倍賞千恵子さん。共演したお二人の印象を。  細田さんとは初共演でしたが、お芝居を一緒にさせていただいてとても楽しかったですし、初めてとは思えないぐらいの安心感がありました。細田さんが演じた涼も難しい役で、百合とはそれぞれの … 続きを読む

【映画コラム】7月の公開映画から

映画2026年8月3日

「トイ・ストーリー5」(7月3日公開)★★★ おもちゃを取り巻く“変化”を描く  持ち主の少女ボニーの成長を見守ってきたカウガール人形のジェシー。だが、タブレット端末「リリーパッド」の登場で、ボニーは画面の世界に夢中になり、おもちゃと遊ぶ時 … 続きを読む

「ConChu!」が大昆虫展アンバサダーに就任! ハロプロ研修生から羽化した4匹たちの、その先とは

インタビュー2026年7月31日

応募1800件超から生まれたユニット名 -「ConChu!」は、昆虫の世界を「コンコン」とノックするイメージと、かわいさを表現した「Chu」を組み合わせた名前だそうですね。「こんちゅ!」と4人のあいさつにも使われていますが、ポーズはどのよう … 続きを読む

page top