エンターテインメント・ウェブマガジン

(C)2025『佐藤さんと佐藤さん』製作委員会
岸井 あそこはワンカット長回し撮影だったので、事前にリハーサル室に本番のセットと同じように机を並べ、入念に導線の確認をしました。ただ、せりふの言い方はそのときの感覚を大事にしたかったので、気持ちの流れを確認するだけにとどめ、本番ではその流れに沿ってお芝居していきました。
宮沢 あのシーンは、タモツがイラっとするまでの様子が、段階を踏んで丁寧に台本に書かれていたんです。だから、自分の気持ちを無理に調整する必要もなく、サチの一言、一言をきちんと受け止めて返せばよかったので、お芝居自体はすごくやりやすかったです。
岸井 結婚式から帰ってきたサチが、ストッキングを脱いだり、イヤリングを外したりしながらタモツに話をするお芝居は「見向きもせずに話した方が、タモツには嫌な感じに見えるよね」と話し合った上で考えました。私もタモツに似たタイプなので、自分がされたら嫌なことをやろうと。それが、すごく楽しくて。
宮沢 タモツとしては、すごくムカついたけど(笑)。でも、おかげでとてもいいシーンになったと思う。あのシーンの撮影はスケジュールの序盤で、物語的にも大きな曲がり角だったから、他のシーンをどんな温度感で演じればいいのか明確になったし。ただ、あのシーンの最後、いら立ったタモツの投げたスカーフがグラスに当たり、テーブルから落ちて割れるんだけど、なかなか当たらなくて苦労したんだよね。そこは、元野球部としては悔しかったな(苦笑)。
岸井 現場でも悔しがっていたね。
宮沢 サチとタモツは、サチが働きに出て、タモツが家で子どもの世話をする形で、「男性が働きに出て、女性が家を守る」という日本の伝統的な家族観を逆転させた関係になっています。それがいい方向に働くこともあれば、逆に壁にぶつかることもある。だから、「これが正解」というものはなく、それぞれの夫婦やパートナー同士で生きやすい方法を探していくしかないんですよね。そういう環境を作るのも、これからの社会の大きな課題ではないかと感じました。
岸井 劇中で、忙しく働くサチが「子どもの顔が見られなくて残念ね」と言われる場面もありますが、本来はそれぞれの関係性の中で本人たちが決めたことであれば、それでいいはずなんですよね。たとえ周りが良かれと思って言ったことでも、立ち入り過ぎて相手を傷つけてしまうリスクもありますし。だから、それぞれが決めたことを尊重する思いやりが周りにも必要ではないのかなと。そんなことを考えさせられました。そうすれば、サチとタモツにも、もっと別の道があった気がします。
(取材・文・写真/井上健一)

(C)2025『佐藤さんと佐藤さん』製作委員会
映画2025年11月28日
-そんな親しい関係を築き上げたお二人に加え、WEBで公開されている本作のプロダクションノートを拝見すると、秋山監督をはじめとするスタッフの熱量もかなり高い現場だったようですね。 松谷 俳優がスタッフも兼任するのが秋山組の特徴で、「慎太郎さん … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年11月28日
吉高由里子が2022年の「クランク・イン!」以来、3年ぶりに舞台主演を果たす。吉高が挑むのは、日常に潜む人間の葛藤や矛盾を丁寧にすくい取り、鋭い視点の中にユーモアを織り交ぜる作風で共感を呼んできた蓬莱竜太が描く新作舞台、パルコ・プロデュー … 続きを読む
映画2025年11月22日
『金髪』(11月21日公開) ある公立中学校で、市川(岩田剛典)が担任するクラスの数十人の生徒たちが髪を金色に染めて登校してきた。生徒たちは校則への抗議を主張し、学校中は大騒ぎになる。活動の発起人である板緑(白鳥玉季)に「なぜ髪を染めては … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年11月22日
数々のミュージカル作品へのオマージュが登場するコメディーミュージカル「サムシング・ロッテン!」が12月19日から上演される。2015年にブロードウェイで初演された本作は、「コーラスライン」、「アニー」、「レ・ミゼラブル」などの人気ミュージ … 続きを読む
映画2025年11月21日
-お互いの演技を見て、どのように思いましたか。 岩田 玉季ちゃんはお芝居になると別人みたいになるタイプだと思いました。現場では、テスト勉強も台本読みと一緒にやっていたから、本当に中学生なんだと思いました。でも、板緑の時は、しっかりと大人顔負 … 続きを読む