岸井ゆきの「夫婦の“切実さ”が描かれている」宮沢氷魚「すごくやりがいがありました」すれ違っていく夫婦役で初共演『佐藤さんと佐藤さん』【インタビュー】

2025年11月28日 / 14:00

(C)2025『佐藤さんと佐藤さん』製作委員会

-結婚したサチとタモツのすれ違いが最初に垣間見えるのが、共通の友人の結婚式に1人で参加したサチが帰宅した後のシーンです。勉強しながら留守番していたタモツに、結婚式の様子を話したサチがトイレに行った後、何気なく「トイレットペーパーないよ」と声を掛ける。それにタモツが「“ないよ”って、僕に“買って来い”って命令してるの?」と言い返したことからケンカになる。ささいな言葉のニュアンスで揉める姿にリアリティーがあり、物語の転換点ともなる重要なシーンですね。

岸井 あそこはワンカット長回し撮影だったので、事前にリハーサル室に本番のセットと同じように机を並べ、入念に導線の確認をしました。ただ、せりふの言い方はそのときの感覚を大事にしたかったので、気持ちの流れを確認するだけにとどめ、本番ではその流れに沿ってお芝居していきました。

宮沢 あのシーンは、タモツがイラっとするまでの様子が、段階を踏んで丁寧に台本に書かれていたんです。だから、自分の気持ちを無理に調整する必要もなく、サチの一言、一言をきちんと受け止めて返せばよかったので、お芝居自体はすごくやりやすかったです。

岸井 結婚式から帰ってきたサチが、ストッキングを脱いだり、イヤリングを外したりしながらタモツに話をするお芝居は「見向きもせずに話した方が、タモツには嫌な感じに見えるよね」と話し合った上で考えました。私もタモツに似たタイプなので、自分がされたら嫌なことをやろうと。それが、すごく楽しくて。

宮沢 タモツとしては、すごくムカついたけど(笑)。でも、おかげでとてもいいシーンになったと思う。あのシーンの撮影はスケジュールの序盤で、物語的にも大きな曲がり角だったから、他のシーンをどんな温度感で演じればいいのか明確になったし。ただ、あのシーンの最後、いら立ったタモツの投げたスカーフがグラスに当たり、テーブルから落ちて割れるんだけど、なかなか当たらなくて苦労したんだよね。そこは、元野球部としては悔しかったな(苦笑)。

岸井 現場でも悔しがっていたね。

-本作には、サチとタモツの姿を通して、夫婦や家族、男女の役割について改めて考えさせられる部分もあります。その点について、お二人はどんなことを考えましたか。

宮沢 サチとタモツは、サチが働きに出て、タモツが家で子どもの世話をする形で、「男性が働きに出て、女性が家を守る」という日本の伝統的な家族観を逆転させた関係になっています。それがいい方向に働くこともあれば、逆に壁にぶつかることもある。だから、「これが正解」というものはなく、それぞれの夫婦やパートナー同士で生きやすい方法を探していくしかないんですよね。そういう環境を作るのも、これからの社会の大きな課題ではないかと感じました。

岸井 劇中で、忙しく働くサチが「子どもの顔が見られなくて残念ね」と言われる場面もありますが、本来はそれぞれの関係性の中で本人たちが決めたことであれば、それでいいはずなんですよね。たとえ周りが良かれと思って言ったことでも、立ち入り過ぎて相手を傷つけてしまうリスクもありますし。だから、それぞれが決めたことを尊重する思いやりが周りにも必要ではないのかなと。そんなことを考えさせられました。そうすれば、サチとタモツにも、もっと別の道があった気がします。

(取材・文・写真/井上健一)

(C)2025『佐藤さんと佐藤さん』製作委員会

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

志田未来「子どもが泣いていると、うるっとしてしまうのは新しい感情」 火曜ドラマ「未来のムスコ」で母親役【インタビュー】

ドラマ2026年1月20日

 志田未来が主演する火曜ドラマ「未来のムスコ」(TBS系)が、1月13日から放送中だ。本作は、阿相クミコ氏・黒麦はぢめ氏の人気漫画をドラマ化。“定職なし、貯金なし、彼氏なし”の崖っぷちアラサー女子・汐川未来(志田)が、ある日突然5歳児・汐川 … 続きを読む

竹内涼真、5年ぶりの舞台に「リニューアルした自分で臨む」 ミュージカル「奇跡を呼ぶ男」でゴスペルにも挑戦【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年1月17日

-ミュージカルでは歌とダンスがありますが、今、どんな心持ちで準備をされていますか。  すごくラッキーなことに、僕は(2025年の)2月までダンスを踊っていたので、5年前にミュージカルに出演したときより、相当、レベルが上がっていると思います。 … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(10)石浦神社で語る「八田與一と嘉義農林学校」

舞台・ミュージカル2026年1月16日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。  語りは、土地と人を結び直します。 … 続きを読む

「豊臣兄弟!」第2回「願いの鐘」豊臣兄弟の家族から直、寧々、市まで、女性キャラの活躍に期待【大河ドラマコラム】

ドラマ2026年1月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(=藤吉郎/池松壮亮)と共に天下統一を成し遂げるまでの奇跡を描く物語だ。1月11日に放送された第2回「願いの鐘」では、一度は故郷の村 … 続きを読む

原田美枝子、松田美由紀監督「映像のワンカットワンカットを体感してもらいたいと思います」「たくさんの謎がある映画なので、ぜひそれを解読してください」『カラノウツワ』【インタビュー】

映画2026年1月15日

-今回は、初老の謎の女性と年下の男の子の話でしたが…。 松田 これは、ラブストーリーとか、いろいろな解釈で見る方がいると思いますが、実はだまし合いの話なんです。主人公の文子は、もともとは詐欺師だったのかもしれない。お金を元手に何かを搾取した … 続きを読む

Willfriends

page top