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オダギリ みんなで楽しもう、という雰囲気はあるとは思うんですが、コメディーって難しいじゃないですか? ちょっとでもタイミングがずれたりするだけで笑えなくなってしまうし。現場の即興で付け加えることはほとんどないよね?
麻生 そうだね。ただその分、オダギリさんが要求するレベルも高いので、常に緊張感を持ってやらせていただいています。きちんとやらないと期待を裏切ってしまいますし、親しいからといって、“なあなあ”では済まされないので。
麻生 私は、わからないものはわからないままでいいと思っているので、基本的に、こちらから監督にお芝居については質問しないようにしています。特にこの映画は、その方が面白くなると思っていましたし。
オダギリ 脚本を書き上げた段階で、自分の中である程度イメージが出来上がっているので、必要なときだけ「もう少しこうしてみましょうか」などと方向性を明確に伝えるようにしています。自分も役者なので、芝居の細かいニュアンスまで理解できるし、役者同士だからこそ伝えられる言葉もありますから。
麻生 ただ、役者のときのオダギリさんは、私をさんざんいじってくるのに、監督のときはすごく丁寧で気を遣ってくださるんです。「キャラ変した?」と思うくらいで(笑)。
オダギリ ははは…(笑)。
麻生 でも、演出してもらうのはすごく楽しい。きっと、私の長所をわかっているからこその役であり、演出だと思うので。ただし今回は、苦手なダンスシーンがあるのが、ものすごくプレッシャーでした(笑)。
オダギリ 僕は、麻生さんの俳優としての能力の高さを知っていますし、その魅力を最大限引き出そうと思いながら脚本を書いているんです。ダンスシーンは今回のいちばんの課題だったかもしれませんね(笑)。
麻生 ダンスはとにかくたくさん練習して、頑張りました(笑)。
オダギリ メタファーとしては、「挑戦」ということかもしれません。何事もやらないよりはやったほうがいいし、目の前に扉があるなら、開けずに「なんだったんだろう?」とやり過ぎるより、後悔することになったとしても開けた方がいい、とは日頃から思っています。ただ、それはあくまでメッセージであるだけで、どう感じるかは観客次第だと思っています。
オダギリ 映画は、そうであってほしいというのが自分の希望です。何も考えず、スカッと終わるシンプルな映画もあれば、深く考えさせられる映画だってありますよね。初めてみる衝撃にしばらく席を立てなくなるような、そんな経験ができるのだって、映画特有の読後感だと思います。色んな人が色んな解釈をしながらこの作品を熟成させてくれたら最高だと思っています。
麻生 私も見ている最中、頭の中で色々な考えがぐるぐる巡り、そうやって考えている時間が楽しかったです。しかも、見終わった後も自分の中で映画が続いていく感じがすごく新鮮で。そういう楽しみ方があるのかと、この映画で知りましたし、この楽しみ方は結構ハマるかも、と思って。自分の中で答え合わせしたいところもあるので、もう一度、映画館に見に行くつもりです。
(取材・文・写真/井上健一)

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