斉藤由貴、デビュー40周年を迎え「感謝の気持ちでいっぱい」 ミュージカル「Once」で久しぶりの舞台に挑む【インタビュー】

2025年8月5日 / 08:00

-ところで、今年は歌手デビュー40周年となります。これまでの芸能生活を振り返って、どのような思いがありますか。

 表に出る仕事だから特にそう感じるのかもしれませんが、ものすごく濃密な、さまざまなことがあった40年だと思います。ただ、これだけ年数が経ってしまうと、あまり覚えていなくて。すごく濃密で、多忙で、でも、すてきな時間をたくさん過ごしたはずなのに、年齢を重ねるといろいろなことを忘れてしまい、過去になってしまうとどうでも良くなってしまう。人生ってそんなものなんだなと、今は感じています。

-ご自身の中でターニングポイントとなった作品との出合いは?

 映像作品でいうと、連続テレビ小説「はね駒」です。12歳から60歳まで一人の女性の生きざまを演じるという重みをすごく感じた作品で、印象に残っています。舞台でいうと、ミュージカル「レ・ミゼラブル」も大きかったです。日本初演でコゼットを演じましたが、コゼットってものすごく難しい役なんですよ。誤解を恐れずに言うならば、あまりやりがいのない役でもある。

-確かに、エポニーヌやファンテーヌとはまた違う立ち位置ですよね。

 そうなんです。陰影があって、人間の生きざまを描くと言う意味で、エポニーヌやファンテーヌの人生は刺さる。でも、それはコゼットの役割ではないんです。なので、私がどんなにあがいても、それを飛び越えることができなかったり、必ずしもそれを打ち破ることを求められていなかったりしました。一つの作品の中で、まっとうすべき役割があることをいやが応でも思い知らされ、プロとしての意識を持った作品でした。余計な自意識は取り除かなければいけないのだと。それから、当然、演劇の場合、劇評というものがついてくるわけですが、劇評に左右されてはいけないと思ったのも「レ・ミゼラブル」でした。自分がどんなに必死に頑張っても劇評には反映されない。それは、自分の力が足りていなかったということもあるのかもしれませんが、逆に自分ができる範疇(はんちゅう)を超えたところにあるものという気もします。

-今年の2月から3月には36年ぶりとなる全国ホールツアーも開催されました。そこではファンの皆さんと40周年をお祝いされたかと思いますが、斉藤さんにとってファンとはどんな存在ですか。

 40周年記念コンサートツアーは、タイトルに「水辺の扉」とつけさせていただいたのですが、「本来あるはずがないようなものだけど、その扉の向こうに抜けると何かがまた始まるかもしれない、あるいは何かの終結かもしれない」という抽象的なイメージでつけたものです。私の中では40周年のコンサートツアーを行うのはすごく不安だったんです。舞台上で歌を歌うことはやればできるのかもしれないけれども、成功する自信がなかった。でも、全公演ソールドアウトの中、開催させていただき、満杯のお客さんをステージ上から見たときに、すごく責任を感じました。お客さんたちが40年前から応援してくださっていると仮定したら、その40年でいろいろな人生を送り、それでも見に行きたい、歌を聞きたい、今の私を見たいと、少なくないお金を払ってきてくださっている。それに対して、何かを感じてもらえる、何かを届けるだけのインパクトや強さを感じていただけるのか。夢や覚悟を見てもらえるか。それができなければ、こうして来てくださっているお客さんに対して失礼だなと強く感じました。40年というのはそうした年月だと思います。一言で言うなら、感謝の気持ちでいっぱいでした。

-久しぶりの舞台出演となる本作でもまた、たくさんのものを客席に届けられるのではないかと期待しています。改めて、この作品の見どころを教えてください。

 「ゆっくり落ちていく」という意味の「Falling Slowly」という本作のすばらしい代表曲があります。一組の男女のお話が軸になっていますが、恋する切なさだけでなく人生の切なさも美しく表現された歌です。その曲を聞くためだけにでも来ていただきたいと思うような唯一無二の楽曲です。すてきな楽曲の多い作品ですので、そうしたところもぜひ楽しみにしていただければと思います。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 ミュージカル「Once」は、9月9日~28日に都内・日生劇場ほか愛知・大阪・福岡で上演。

ミュージカル「Once」

 

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

井上祐貴「決して美しい人間関係を描いているわけではありませんが、リアルな描写が多いので、それが共感につながると思います」『男ともだち』【インタビュー】

映画2026年11月5日

-3人のキャラクターに共感はできましたか。  そのキャラクター全部に共感できるというのは、あまりないのですが、ポイントポイントでは、そりゃそうだよねって思う共感はありました。ただ、それは違うぞと思ったところもたくさんありました。 -神名役の … 続きを読む

相葉雅紀「チームメイトの障がい者の皆さんから、ものすごい熱量を感じました」黒島結菜「相葉さんは本物の野球チームの監督のようでした」実際の障がい者たちとも作り上げた奇跡の物語『4アウト ─もう一度、プレイボール─』【インタビュー】

映画2026年11月3日

-お話を伺っていると、参加した皆さんが一丸となって作り上げたすてきな現場だったことが感じられます。 相葉 原作・脚本の平山讓さんは、取材から含めて30年くらいこの作品と向き合っていますし、稲垣(壮洋)監督も何年もの時間をこの作品に費やしてい … 続きを読む

山崎育三郎「一番、自分に近い存在」 ミュージカル「ファインディング・ネバーランド」が伝える「解釈力」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年10月31日

-改めて、この作品の魅力はどんなところにあると感じていますか。  僕は、生きていく中で「解釈力」が大事だなと思っています。生きているといろいろなことが起きますよね。大変な状況や苦しいこと、大失敗もある。でも、起こった事実は変えられなくても、 … 続きを読む

【映画コラム】10月の公開映画から

映画2026年10月31日

「クジラに落ちた男」(16日公開)★★★ 父を知り、父を乗り越える  巨大なマッコウクジラに丸のみにされた17歳のジェイ(オースティン・エイブラムス)が、亡き父の教えを頼りに脱出を図る。ブライアン・ダッフィールド監督が描くのは、「ピノキオ」 … 続きを読む

柳楽優弥「川栄さんと真剣に作品に向き合ってきた」川栄李奈「柳楽さんを信頼しています」共演4度目の2人が伝説的作品に挑む『RYUJI 竜二』【インタビュー】

映画2026年10月30日

-以前お話を伺った際、柳楽さんはご自身のお芝居について「以前は自分を役に寄せていくやり方をしていたが、『浅草キッド』の後からは、自分のパーソナルな部分を役に反映させて演じるようにしている」というお話をされていました。今回、竜二という役に対し … 続きを読む

page top