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表に出る仕事だから特にそう感じるのかもしれませんが、ものすごく濃密な、さまざまなことがあった40年だと思います。ただ、これだけ年数が経ってしまうと、あまり覚えていなくて。すごく濃密で、多忙で、でも、すてきな時間をたくさん過ごしたはずなのに、年齢を重ねるといろいろなことを忘れてしまい、過去になってしまうとどうでも良くなってしまう。人生ってそんなものなんだなと、今は感じています。
映像作品でいうと、連続テレビ小説「はね駒」です。12歳から60歳まで一人の女性の生きざまを演じるという重みをすごく感じた作品で、印象に残っています。舞台でいうと、ミュージカル「レ・ミゼラブル」も大きかったです。日本初演でコゼットを演じましたが、コゼットってものすごく難しい役なんですよ。誤解を恐れずに言うならば、あまりやりがいのない役でもある。
そうなんです。陰影があって、人間の生きざまを描くと言う意味で、エポニーヌやファンテーヌの人生は刺さる。でも、それはコゼットの役割ではないんです。なので、私がどんなにあがいても、それを飛び越えることができなかったり、必ずしもそれを打ち破ることを求められていなかったりしました。一つの作品の中で、まっとうすべき役割があることをいやが応でも思い知らされ、プロとしての意識を持った作品でした。余計な自意識は取り除かなければいけないのだと。それから、当然、演劇の場合、劇評というものがついてくるわけですが、劇評に左右されてはいけないと思ったのも「レ・ミゼラブル」でした。自分がどんなに必死に頑張っても劇評には反映されない。それは、自分の力が足りていなかったということもあるのかもしれませんが、逆に自分ができる範疇(はんちゅう)を超えたところにあるものという気もします。
40周年記念コンサートツアーは、タイトルに「水辺の扉」とつけさせていただいたのですが、「本来あるはずがないようなものだけど、その扉の向こうに抜けると何かがまた始まるかもしれない、あるいは何かの終結かもしれない」という抽象的なイメージでつけたものです。私の中では40周年のコンサートツアーを行うのはすごく不安だったんです。舞台上で歌を歌うことはやればできるのかもしれないけれども、成功する自信がなかった。でも、全公演ソールドアウトの中、開催させていただき、満杯のお客さんをステージ上から見たときに、すごく責任を感じました。お客さんたちが40年前から応援してくださっていると仮定したら、その40年でいろいろな人生を送り、それでも見に行きたい、歌を聞きたい、今の私を見たいと、少なくないお金を払ってきてくださっている。それに対して、何かを感じてもらえる、何かを届けるだけのインパクトや強さを感じていただけるのか。夢や覚悟を見てもらえるか。それができなければ、こうして来てくださっているお客さんに対して失礼だなと強く感じました。40年というのはそうした年月だと思います。一言で言うなら、感謝の気持ちでいっぱいでした。
「ゆっくり落ちていく」という意味の「Falling Slowly」という本作のすばらしい代表曲があります。一組の男女のお話が軸になっていますが、恋する切なさだけでなく人生の切なさも美しく表現された歌です。その曲を聞くためだけにでも来ていただきたいと思うような唯一無二の楽曲です。すてきな楽曲の多い作品ですので、そうしたところもぜひ楽しみにしていただければと思います。
(取材・文・写真/嶋田真己)
ミュージカル「Once」は、9月9日~28日に都内・日生劇場ほか愛知・大阪・福岡で上演。
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