品川ヒロシ監督「監督としての僕の集大成」 アクション満載の青春活劇に込めた思い『OUT』【インタビュー】

2023年11月13日 / 12:30

-長嶋圭吾役の與那城奨さん、目黒修也役の大平祥生さん、沢村良役の金城碧海さんも、グループの“JO1”で活動している時とは印象が全く違いますね。

 彼ら3人には、いくつかの役を交代で試してもらって、見た目や芝居を含め、それぞれが一番ハマる役に決めていきました。確かに一見、JO1とは思えませんよね(笑)。他のキャストもみんな、オーディションでイメージに合った人を選んでいます。ただ、役がハマったのは僕だけの力ではなく、体を大きくしたり、鍛えたり、それぞれが役作りを頑張ってくれたおかげです。

『OUT』11月17日(金)全国劇場公開 配給: KADOKAWA
©2023『OUT』 製作委員会

 

-大きな見どころのアクションシーンも、それぞれ役者本人が演じていることがわかるように撮られていて、各キャラの魅力を引き立てています。

 僕は、ジャッキー・チェンが大好きなんですけど、ジャッキーはアクションをすべて自分でやっているんですよね。『OUT』では、さすがに全部とはいきませんが、なるべく本人にやってもらい、それが分かるように撮ることを大前提にしました。その分、みんな大変だったと思いますが、その必死さが映像に映り、リアリティーが生まれたと思います。

-マンガは絵さえ描けばどんなことでもできますが、それを忠実に実写化しようとすると、役者の負荷が大きくなります。この作品ではそういう部分もきちんと撮っていますね。

 あっちゃんがジャンプして、相手の顔をバシッと踏みつける、みたいな原作の象徴的なシーンは、多少難しくても、絶対に映像化しようと思っていました。「こんなのどうやったらできるんだろう?」というアクションを、みんなで試行錯誤して、「こんなの見たことない!」という映像に仕上げていく。それが今回目指したアクションの方向性です。せっかく映画にするんだし、風呂敷を広げて、もっと派手な「階段落ち」のようなアクションをやる、という選択肢もあったのかもしれません。でも今回は、それよりもできるだけ原作をリスペクトしようと。

-アクションシーンは見応えたっぷりで、大人数の集団戦も迫力満点でしたが、その分、撮影時の苦労も多かったのでは?

 大変でないシーンはなかったです(笑)。すべてのアクションシーンで、もう1日ずつ欲しかったくらいで。ただその分、「絶対に今日撮りきる。でも、納得しなければOKは出さない」みたいな気迫で僕は現場に臨みましたし、それがみんなにも伝わり、いい緊張感が生まれたんじゃないかと思います。

-そうすると、品川監督自身の中でこの作品はどういう位置づけになりますか。

 10年くらい前から、アメリカでインディーズのホラー映画を撮るのが僕の目標だったんです。そうしたら数年前、アメリカのプロデューサーから「アメリカで映画を撮ってみないか」という話がきて。そういうタイミングで、デビュー作『ドロップ』とも縁が深い『OUT』で、ぐるっと一回りしてまたヤンキー映画に戻ってきたことは、監督として僕が歩んできたこの14年間の集大成になったんじゃないかなと。ここで一区切りつけて、次のステップへ、という感じで、節目を飾る作品になったと思っています。

-お客さんにはこの映画をどんなふうに楽しんでほしいと思っていますか。

 僕は『戦国自衛隊』(79)や『セーラー服と機関銃』(81)、『里見八犬伝』(83)、『二代目はクリスチャン』(85)といった昔の角川映画が大好きなんです。友情も恋愛要素もアクションも入っていて、みんなでポップコーンを食べながら楽しめて、ちょっと泣けて、笑える、みたいなやつ。だから、この映画でもそういうテイストを目指しました。例えるなら、豚肉も牛肉も鶏肉もソーセージも入った、“うまいもの全部入りの鍋”みたいなイメージ。だから、皆さんもそんなふうに仲間とわいわい、気軽に楽しんでほしいですね。

(取材・文・写真/井上健一)

『OUT』11月17日(金)全国劇場公開 配給: KADOKAWA
©2023『OUT』 製作委員会

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【週末映画コラム】『六人の嘘つきな大学生』/『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(11月22日公開)

映画2024年11月22日

『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(11月22日公開)  真面目な税務署員の熊沢二郎(内野聖陽)は、天才詐欺師の氷室マコト(岡田将生)の巧妙な詐欺に引っかかり大金をだまし取られてしまう。  熊沢は、親友で刑事の八木(皆川猿時)の … 続きを読む

生駒里奈が語る俳優業への思い 「自分ではない瞬間が多ければ多いほど自分の人生が楽しい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年11月20日

-なるほど。では、公演が12月ということで、2024年の振り返りをお願いします。  今年は自分で掲げた目標に対しての成果も感じることができたので、充実した1年でした。これまではどこかで「やらされている」という感覚があって、自分の意志でできた … 続きを読む

史上最年少!司法試験に合格 架空の設定ではないリアルな高校2年生がドラマ「モンスター」のプロデューサーと対談 ドラマ現場見学も

ドラマ2024年11月17日

  Q:合格に向けて、どのように勉強されたか教えてください。 早川 中3の2月に、予備試験を目指すぞって決めてからは、興味の赴くままがむしゃらに勉強してました。平日は、学校から帰ってきて、先ほどお話しした「伊藤塾」のオンライン授業を夜10時 … 続きを読む

八村倫太郎「俊さんに助けられました」、栁俊太郎「初主演とは思えない気遣いに感謝」 大ヒットWEBコミック原作のサスペンスホラーで初共演『他人は地獄だ』【インタビュー】

映画2024年11月15日

-お2人は今回初共演となりますが、現場での様子はいかがでしたか。 八村 「シェアハウス対ユウ」という構図がある中で、共演者の方々とどういう距離感で接すればいいのか、だいぶ悩みました。でも僕は、役のために距離を取ったりすることが苦手なんです。 … 続きを読む

「光る君へ」第四十三回「輝きののちに」若い世代と向き合うまひろと道長【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年11月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。11月10日に放送された第四十三回「輝きののちに」では、三条天皇(木村達成)の譲位問題を軸に、さまざまな人間模様が繰り広げられた。  病を患い、視力と聴力が衰えた三条天皇に、「お目も見えず、お耳 … 続きを読む

Willfriends

page top