ある日突然、死んでしまったホストの桜田和彦。幽霊となった彼は、同じく成仏できずにいる口の悪い元看護師・佐々木咲ら幽霊仲間と一つ屋根の下で暮らすうち、自分の人生を見つめ直していく…。9月1日からWOWOWで放送・配信スタートとなるドラマ「オレは死んじまったゼ!」(全7話)は、人間味溢れる幽霊たちの日常をユーモアたっぷりにつづった物語だ。主人公・桜田和彦と幽霊仲間の佐々木咲を演じるのは、柳楽優弥と川栄李奈。これが3度目の共演となる2人が、撮影の舞台裏を語ってくれた。
-とてもユニークな物語ですが、脚本を読んだときの感想は?
柳楽 幽霊が主人公ですが、物語自体は日常で抱える悩みと向き合い、ひとつずつ解決していく中でだんだん仲間が増えていって…というヒューマン要素が強かったので、いい読後感がありました。ホラーやサスペンス的な要素はゼロでしたし。
川栄 毎話、心に刺さりました。抱えている悩みは登場人物それぞれで違うんですけど、最後まで見終わったとき、勇気づけられる作品だなと。
-日本人としてサンダンス映画祭短編部門グランプリを初めて受賞した長久允監督の独創的な映像表現も見どころですが、現場の印象は?
柳楽 僕は以前から長久監督の作品が好きだったので、初めて長久組に参加できてうれしかったです。ただ、撮影中はどこをモノクロにするとか、ここはフィルムっぽいルックで、といったことがわからないので、「これが長久イズム!」みたいなものを現場で感じることはなかったんです。
川栄 確かにそうですね。でも、今まで体験したことのないアングルや方法で撮影していたのは印象的でした。カメラマンの方が、セグウェイのような乗り物に乗って、移動しながら撮影していたのも、初めて見て驚きました。おかげで「完成したらどうなるんだろう?」と楽しみになりました。
柳楽 編集して音楽も入った完成映像を見たら、現場でイメージしていたものと全然違うから、「こうなったんだ!?」と驚いたよね。でも、キレキレの音楽だったり、映像のリズムのよさだったり、いろんな表現にこだわっているのが長久監督らしくて、改めて「好きだな」と。
川栄 といっても、撮影自体は無駄がなく、スムーズでした。監督の撮りたいものがはっきりしていたので。しかも、役者の感情を大切にして撮ってくださるんです。第2話で私が涙を流すシーンは、「カメラがこう来て、ずっと撮っていますから、いいところで」と言ってくださって、すごくやりやすかったです。その上で、音や映像で楽しませてくれたので、出来上がった作品を見た時、すごくおしゃれだなと思いました。
-三度目となるお2人の共演はいかがでしたか。
柳楽 川栄さんとは初共演から6年くらい経ちますが、その間に3回も共演できるなんて、驚きです。役の関係は毎回違いますけど、初対面の相手と違って信頼関係ができているので、変に緊張することなく、安心してお芝居ができます。おかげで、初めての長久組でも「いい現場に参加できている」と実感する瞬間が多くて。
川栄 柳楽さんは今回、“ホストの幽霊”というちょっと奇抜な役ですけど、いつもすてきなお芝居をされるので、どんな役でも絶対的な安心感があるんです。その上、「僕が主演です!」という感じで変に張り切るわけでもなく、自然体で現場にいてくださるので、みんなもリラックスできましたし。
柳楽 確かに、「よし、今日は行くぞ!」みたいな感じではないね(笑)。
-実際に現場でお芝居をしてみた手応えは?
柳楽 今回は、やりたいことができる現場だったという充実感がありました。実は僕、20代の頃は自分を役柄に寄せていくことを意識していたんですけど、30代に入って考えが変わってきたんです。
-どのように?
柳楽 もうちょっと自分のパーソナルな部分に軸を置き、それが役柄と重なっていく…みたいな表現をしてみたいなと。以前、(ビートたけし役を演じた)「浅草キッド」(21)に出演したとき、役に寄せていく芝居を「やり切った」という達成感があったんです。それを境に、素の自分を大切にした方が、そこから生まれる感情が、いい方向に作用するんじゃないかと考えるようになって。裏返せば、役に対する最低限の責任さえ持っていれば、過剰なアプローチは不要で、無理に役に寄せて行っても、いい効果を生まない気がしてきたんです。その点、自然体でいることを許してくれた長久監督の現場は、そういう僕のコンセプトにぴったりでした。
川栄 『泣くな赤鬼』(19)でご一緒したとき、柳楽さんは減量してがん患者の役を演じられていたので、すごく大変そうでした。でも今回は、そのときと違って、とても自然体で。
-川栄さんは今回、そういう柳楽さんと共演してどんな感想を?
川栄 私は普段、お仕事のお話を頂いたとき、じっくり考えてからお返事するようにしているんです。でも今回は「柳楽さんが主演で、幽霊でコメディー」ということで、「やります!」と即答したんです。柳楽さんのことは、それくらい信頼しています。今回ご一緒してみて、私も「川栄さんならやります」と言ってもらえるような人間でありたいなと、改めて思いました。あと、みずがめ座(川栄さんの誕生日に該当する星座)をめちゃくちゃほめてくださったので、気分がよかったです(笑)。
柳楽 僕、星座占いが好きなんですけど、最近読んだ本に「みずがめ座のO型は絶好調」と書いてあったんです。しかも、カメラマンの方もみずがめ座だったので、「こんな近くに2人もいる!ノリノリじゃん!」と思って。おかげで、ものすごく安心できる現場でした(笑)。
-それが作品やお芝居にもいい影響をもたらしたのかもしれませんね。それでは最後に、お客さんへの言葉を。
柳楽 ちょっと不思議なタイトルですが、奇抜な映像表現だけでなく、長久監督らしいユーモアのあるヒューマンな作品に仕上がっています。1話30分で気軽に楽しめるので、ぜひいろんな方に見てほしいです。
川栄 死後の世界が舞台ですが、「人は助け合いながら生きているんだな」と、前向きな気持ちになれると思います。柳楽さんが頑張ってパラパラを踊るシーンもありますし、ユーモア満載なので、ぜひ楽しんでください。
(取材・文・写真/井上健一)
連続ドラマW-30「オレは死んじまったゼ!」
WOWOWプライム、WOWOWオンデマンド 2023年9月1日(金)23:30~ 放送・配信スタート
(全7話)※第1話無料放送