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竹中直人「ニック・フューリーというよりも別のキャラクターになったような気になった」ドラマ「シークレット・インベージョン」【インタビュー】

 アベンジャーズの創始者ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が、あらゆる人物に“擬態”できる能力を持つスクラル人の“シークレット・インベージョン(見えざる地球侵略計画)”の阻止に挑むマーベル・スタジオ最新ドラマシリーズ「シークレット・インベージョン」(全6話)が現在Disney+で独占配信中だ。

 2012年公開の映画『アベンジャーズ』から約12年間ニック・フューリーの日本語版声優を務める竹中直人に本作の見どころや声優という仕事の難しさ、楽しさを聞いた。

竹中直人 (C)エンタメOVO

―ニック・フューリーが主役のドラマ「シークレット・インベージョン」ですが、このドラマならではの魅力や竹中さんが演じていく中で新しい発見はありましたか。

 今までとは全く違います! まさかアイパッチもなく、地味な格好の彼が画面に現れるなんて!!! だから、今回はニック・フューリー(以下ニック)ではなく別のキャラクターに思えました!  もちろん彼は普通の人間ですが、コスチュームが変わるだけでこんなにも違うのかと驚いたんです! なかなか難しい作業でした。『キャプテンマーベル』で若い時のニックをやった時も難しかったんですよね(笑)。でも、回を重ねるごとにどんどん楽しくなっていきました。

―収録時のお話をお聞かせください。

 毎回何も知らない状態で収録に挑みました。スタジオに入って初めて映像を見て直観的に声を合わせていきます。そういった作業を毎週続けていくのがとても緊張感があって面白かったです。ただ、今回ロシア語をしゃべるシーンもあり心配でした。絶対にそれは無理だろうと思っていたのですが、ロシア語の先生からすぐにOKをいただいたのはびっくりしましたね(笑)。

―いきなり本番でOKだったんですか。

 そうです。ぶっつけ本番です。でもさすがにロシア語の音源だけは事前にもらっていましたよ! 今年の4月に、僕が出演する映画を撮影したんですがその映画の中でロシア語をしゃべるシーンがあったんです。だからちょっとだけロシア語にはなじんでいたのかもしれませんね(笑)。その時のロシア語の先生はなかなか厳しかったですが。

―ニック・フューリーの声優を約12年担当されていますが、竹中さんの中にあるフューリーの印象は変わりましたか。

 変わりましたね。ニックといえば全身黒のコートに黒いアイパッチですからね。そのイメージが今回は普通の人になってる。いつものニックじゃない。今までとは違う感覚になりました。そして老いというものにも触れています。より深く「人間ニック・フューリー」を感じることができました。

―MCU以外にも長年たくさんの吹き替えやアニメ作品に出演されていますが、声優というお仕事についてお聞かせください。

 声優のお仕事は字幕を追わずに分かりやすくする作業でもあります。そして、吹き替えによって、そのキャラクターを膨らますこともできるし、逆に縮めてしまうこともある。とても緊張感のある仕事です。声優は子どもの頃からあこがれの仕事だったのでずっとやってみたいと思っていました。俳優はもちろん、自分じゃない人間になれるという意味でとてもあこがれていた仕事です。声優も外国の俳優に新たな命を吹き込んでいくというとても魅力的な仕事だと思います。しかしまさか自分が声優の仕事を続けていけるとは思ってもいなかった。そして、ニック・フューリーというキャラクターを続けさせていただいている事、とてもうれしく思っています。

 「シークレット・インベージョン」は全く先が読めない展開です。どんな声の音色と息遣いでニックの吹き替えを演じるかが毎回楽しみな収録でした。

―MCU愛の強い竹中さんですが、ニック以外にMARVELヒーローの中で好きなヒーローはだれですか。

 いちばん好きなのはワンダ(スカーレット・ウィッチ/エリザベス・オルセン)ですね!! 彼女の怒りの表情がたまらない! エリザベス・オルセン最高です!!

―声優のお仕事に昔からあこがれがあったということでしたがはじめの頃はどのように声を当てていたのでしょうか。また、参考にした方などはいますか。

 誰かを参考にしたことはないですね。自分が担当するキャラクターのイメージに合わせるのが楽しい作業です。昔から直感で声を当ててきましたね。「このキャラクターはどんな声の音色を出すんだろう」とイメージを膨らませながら声を作っていきます。声の音色を探る作業は今も昔も変わりませんね。作品によっては監督から「竹中さんの声のままで」と言われることもあります。「すぐに竹中の声だってわかったよ」って言われることもありますね。

―竹中さんのイメージする声と監督からの指示が違った時はどのように声の方向性を決めますか。

 『イノセンス』(1995年公開)の時、まずは自分がイメージした、かすれ声を出してみました。すると押井守監督から「竹中さんの声のままで」と指示がありました。でも自分の中ではこのキャラクターならかすれ声のイメージだったんです。一度映像と合わせて監督に聞いて頂きました。すると押井監督が「そっちでいきましょう」と言ってくださった。『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』(2009年公開)に出演させていただいた時は尾田(栄一郎)先生に「もっとがんがんにテンション上げちゃってください!」と言われたことがあります。

―今作のヴィラン、クラヴィクの印象はいかがですか。

 かっこいいですよね! クール! ゾクっとする魅力があります。やっぱり悪役に魅力がないと作品が面白くならない。それに今回は一体誰を信じていいかわからないままずっと緊張感を抱えたまま物語が進行して行きます。毎回息を止めてみるような世界です。

―まさに「まばたきできない」作品ですね。

 はい。テレビドラマはリラックスして見るものと思ったら大間違いですね。見終わるたび、集中しすぎて「あぁ疲れた…」となんとも言えない充実感もあります。全6話で終わってしまうのが残念でなりません。

―最後にコメントをお願いします。

 見る側にとてつもない緊張感を与えるドラマだと思います。先の展開が全く読めない。「不安」という言葉が魅力的に感じるドラマはいまだかつてなかったと思います!

 毎回息もできず、よそ見さえできない展開をどうか楽しんで下さいね!!

竹中直人 (C)エンタメOVO

 

(取材・撮影 丸山有咲)

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