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撮影に入る前に何度かお会いした中で、丸1日しっかりとお話を聞く機会がありました。現場にもよくいらっしゃっていたので、「このとき、どんな感じでした?」とアドバイスを求めたこともあります。そんなときも、丹野さんはすごくおおらかに明るく接してくださったので、とても頼もしかったです。
ほかにも、「認知症ご本人に読んでほしい本」と「認知症患者の周囲の方に読んでほしい本」の2種類の本を丹野さんが書いていらっしゃったので、参考までに、認知症ご本人向けの本を読ませていただきました。そうしたら、認知症の症状による苦しみ以上に、周りから「外を出歩かないで」「何もしなくていいから、じっとしていて」「会社も辞めて」と言われる状況が一番苦しかったそうなんです。それが原因で病気になって亡くなる方が多いとも書かれていましたし。
その点は役作りにおいても大事なことなので、僕自身もよく考えてみました。丹野さんは優秀な営業マンで、家族や仲間、会社の部下や上司にも恵まれ、順風満帆な生活を送っていました。そんなときに突然、大好きな仕事を奪われることになったら、僕だったらどう思うだろうと。陸上を捨ててまで俳優になった僕が、今その俳優の仕事を奪われたら、生きていけるだろうか。その上、心配してくれているとはいえ、今まで仲良くやってきた妻の態度が急に変わる。そういうことを想像していくと、誰だって絶望的な気持ちになるよなと。認知症ご本人だったら、恐らくそこまで考える人はいっぱいいると思うんです。
丹野さんは発病する以前から、困っている部下に手を差し伸べたり、飲み会の盛り上げ役を買って出たり、いろんな人たちに気配りや心配り、優しさをたくさん振りまいてきたと思うんです。だから、いざ認知症と分かったとき、みんなが手を差し伸べてくれたのかなと。発症するまで40年近く、そんなふうに生きてきたことを考えたら、すごく納得できました。
とはいえ、丹野さんのような前向きなバイタリティーは、全員がまねできるものではないかもしれません。その点は確かに、丹野さんのすごいところだと思います。でも同時に、他の人には無理なのかと考えてみると、諦めることはないんじゃないかなと。他にも丹野さんが実践できていないやり方でやっていける人たちが、これからもたくさん出てくるに違いありません。そのために一つの参考として、こういう生き方があるんだよ、ということを映画で示すのは、すごく意味のあることじゃないかと思います。実際、試写が終わったとき、丹野さんの表情を見たら、「とてもいいものができたな」という手応えもありましたから。
(取材・文・写真/井上健一)
(C)2022 「オレンジ・ランプ」製作委員会
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