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「らんまん」宮野真守「神木くんとの初めてのお芝居は面白かった」主人公・万太郎に転機をもたらすキーパーソン役で朝ドラ初出演【インタビュー】

 NHKで放送中の連続テレビ小説「らんまん」。明治から昭和にかけて活躍した“日本の植物分類学の父”牧野富太郎博士をモデルに、愛する植物のため、激動の時代をいちずに突き進む主人公・槙野万太郎(神木隆之介)の波瀾(はらん)万丈な生涯を描く物語。本作で、造り酒屋の当主の立場と好きな植物研究の間で苦悩する万太郎に転機をもたらすキーパーソンが、自由民権運動のリーダー、早川逸馬だ。演じるのは、声優・俳優・歌手として幅広く活躍する宮野真守。万太郎との出会いのシーンの舞台裏や神木の印象など、初出演の朝ドラで感じたことを語ってくれた。

早川逸馬役の宮野真守 (C)NHK

-演説中の逸馬に「それは違う」と異論を唱えた万太郎と一触即発の空気から、一連のやり取りを経てたちまち意気投合する2人の初対面はとても印象的でした。撮影はいかがでしたか。

 僕もすごく印象に残っています。あのシーンは監督が、「逸馬が言ったら万太郎がかぶせて言うぐらいの、初対面なのに気持ちが同調して、エネルギーがどんどん積み重なっていくような演説にしたい」とおっしゃっていたんです。ただ、何回もテイクを重ねたので、中には「どうも~、万太郎です~!」みたいな、2人でボケとツッコミのような面白い感じになってしまったこともあって(笑)。もちろんそれは使われませんでしたが、神木くんと漫才のようなことができたのは、すごく面白かったです。しかも、僕と神木くんの初めてのお芝居があのシーンだったんです。おかげでその直後、「自分はこう思っている」、「僕はこう思っています」と芝居論のような話もできて、すごくやりやすくなりました。

-お二人の思いが伝わるすてきなシーンでした。ところで、朝ドラ初出演だそうですが、現場の印象はいかがですか。

 実はお話を頂いてから実際に現場に入るまで、ものすごく緊張していたんです。リハーサルだけの日があることなど、何もかもが初めての体験で、どんな準備をすればいいのかも分からなくて。とりあえず、自分のできることをやっておこうと思い、土佐言葉を一生懸命練習して、ドキドキしながら現場に行ったんです。そうしたら、遠くから神木くんが「マモさ~ん!」って、天使のような笑顔で駆けてきて(笑)。それですっかり緊張が解けました。

-主演の神木さんの印象は?

 「天使」の一言に尽きます(笑)。初めて会ったのは、神木くんが僕の舞台を見て、楽屋にあいさつに来てくれたときでした。仕事でご一緒するのは今回が初めてですが、最初から「マモさん、マモさん」と子犬のように慕ってくれて。最初のリハーサルの日からそうだったので、彼はこうやって現場の空気を明るくして、天真らんまんに作品作りに向かっているんだろうなと思ったら、何てすてきな現場なんだろうと。それがいろんな人に伝播して、幸せの輪がどんどん広がっているんだろうなと思うと、僕もその場に加わることができて、とても幸せです。

-そのほか、神木さんとのエピソードがあれば教えてください。

 神木くんの好きなアニメのキャラクターを僕がやっていたので、「あの声をやってください」とずっとお願いされていたんです。あるとき、それをメークに行く前にやってあげたら「やった!」と喜んでメーク室に入っていきました(笑)。スタッフさんにも「僕の神なんです」と紹介してくれたことがあるんですけど、そのとき、大河ドラマの撮影でたまたま通りかかった山田裕貴くんも「僕の神なんです」と紹介してくれて(笑)。あれは面白い瞬間でした。

-現場のいい雰囲気が伝わってくるような話です。ところで、早川逸馬という役を演じてみた感想は?

 逸馬は演説会のシーンが多く、撮影も壇上で聴衆にアピールしていくシーンからだったんです。だから、「自分の経験がこんなに生かせるキャラクターに出会えたんだ」と思う瞬間がありました。壇上への上がり方や上ったときの空気感は、僕がライブのときにファンの皆さんへのアプローチの仕方や目線の配り方に通じるものがありますし。こんな役に出会えるのは、本当に珍しいです。

-そのほか、逸馬の登場シーンで印象的だったことは?

 万太郎と一緒に中濱万次郎(宇崎竜童)さんに会いに行くシーンは特に印象的でした。逸馬が万太郎を中濱さんに紹介するんですけど、そこは万太郎のためでもありましたが、それぞれの追い求める自由に対して、3人がそれぞれのベクトルで向き合う瞬間だったんですよね。その空気感やまなざしみたいなものが、すごく好きで。

-物語の上でも大事なシーンですね。

 そして何より、あのシーンは宇崎さんがいらっしゃったので、めちゃくちゃ緊張していたんです。そうしたら、本番直前に宇崎さんが僕らを呼び止め、誰もいないところで3人だけで円陣を組んで「やるぞ!」とやってくれたんです。それで気持ちがぐっと固まって。3人の間に同志として大事なものがないといけないシーンだったので、宇崎さんがそんなふうに先導してくれたことに、すごく感動しました。

-演じる中で感じた「らんまん」という作品の印象は?

 僕は坂本龍馬が好きで、幕末から明治にかけての時代感がすごく好きなんです。当時のエネルギー感は、演じる側としてもすごく身が入りますし、自分が信じるものに対して、真っすぐに生きることの勇気や楽しさなど、そのかけがえのなさも教えてくれるので。ただ、好きなものを追い求めるときは、人それぞれに困難もあります。そういう感情に寄り添ってくれるのが「らんまん」じゃないかなと。しかも、その中心にいる万太郎が人をつないでいく姿がとても温かいし、それを植物というモチーフを通して見せてくれるから、より美しくて感動的なんです。その連鎖が絶妙ですよね。

-それでは最後に、視聴者へのメッセージを。

 思ってもいなかった朝ドラ出演という貴重な機会を頂き、僕の役者人生の中でとても大事なステップになると同時に、すごくいい経験をさせてもらっています。すてきな出会いもあり、役者としての可能性にも気付かせてもらえたので、自分にとってかけがえのないものになりました。この作品をご覧いただければ、必ずや皆さんの人生にも希望の種が芽吹くと思うので、小さく芽吹いたその新芽を、ぜひ人生の大事な指針にしていただければと思います。ぜひこれからも「らんまん」を楽しんでください。

(取材・文/井上健一)

早川逸馬役の宮野真守 (C)NHK

 

 

 

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