「僕にとっての8ミリ映画は、地元でおいしいご飯屋さんを新しく見つけた感じ」『Single8』上村侑【インタビュー】

2023年3月7日 / 08:00

 1978年、夏。高校生の栗田広志(上村侑)は『スター・ウォーズ』に影響を受け、友人の喜男(福澤希空)と共に宇宙船のミニチュアを作って8ミリカメラで撮影する。そして、文化祭の出し物として、映画製作を提案。思いを寄せる夏美(高石あかり)にヒロイン役を依頼し、喜男や映画マニアの佐々木(桑山隆太)も加えて映画製作に取りかかる。小中和哉監督が、自身の青春時代を題材に脚本を書き下ろして監督した青春映画『Single8』が、3月18日から渋谷ユーロスペースほか全国順次公開される。主人公の広志を演じた上村に話を聞いた。

上村侑 (C)エンタメOVO

-前作『近江商人、走る!』は時代劇でしたが、この映画も自分が生まれる前の1978年の出来事を描いた、ある意味時代劇だったと思いますが、実際に演じてみてどう感じましたか。

 (小中和哉)監督が「時代背景みたいなものは、深く意識しなくても大丈夫」という話をされていたので、あまり70年代の雰囲気に捉われずに、いい意味で、現代劇っぽい会話のやり取りができたと思います。

-私は小中監督とほぼ同世代なので、40年前の高校生活はこんな感じだったなと懐かしく思い出しました。

 実は小中監督が高校時代に8ミリで撮った、飯ごう炊飯の映像を見させてもらったときに、自分がイメージしていた昔の高校生の像と、いい意味で違っていると思いました。自分たちの高校時代の雰囲気や友達とのやり取りと、それほど変わらなかったんです。40年前も今も、高校生のやり取りは同じようなものだということです。それが自分の中では大きなヒントになりました。それからは、70年代ということをあまり意識しなくなりました。今の子たちがスマホでやっているのとそんなに変わらないのかなと思いました。

-小中監督の演出や指導で印象に残ったことはありましたか。

 撮り方が特殊で、割と一連で動くことが多くて、基本的にせりふがない瞬間も、自分たちはしゃべっていましたし、アドリブのシーンも多くて、その場でリアルに生まれた会話もありました。だから、ドキュメンタリーを撮っているような感じがしました。それに、自分たちが劇中で映画を作っているところをカメラで撮っていたので、メイキングを撮られているような感覚もありました。芝居に関する特別な指導はなくて、「好きにやっていいよ。それをカメラに収めるから」というスタイルで撮ってくださいました。ただ、8ミリのことになると、「ここがこういう機能で…」とか「持ち方はこうで」「もう少しこうした方がいい」みたいに、指示が急に細かくなったりして、そこのこだわりは強いんだと思いました(笑)。

-先ほど話に出た「飯ごう炊飯」もそうですが、劇中に登場する小中監督の高校時代の8ミリの映像を見た印象は?

 本当に今と変わらないと思いました。もちろんフィルムの画質なのですが、今の若者言葉で言えば「ちょっとエモい」(笑)。ノスタルジックな感じがあって、現代にはないものなので、ちょっとずるいなと。当時からすれば、僕らがスマホでやっているのと同じで、もしかしたら、僕らが今スマホで撮った映像を、僕らの息子や孫が見たら、驚くかもしれません。そう考えると感慨深いものがあるし、デジタルで簡単に撮っている映像よりも、すごくきれいな思い出に見えるというのが、フィルムカメラの魅力なのかなと思います。

-手作り感満載で手間のかかる8ミリ映画の製作を実際にやってみてどう思いましたか。

 8ミリカメラについてはだいぶ詳しくなったと思います。今回はちゃんと1本の映画を作ったので、8ミリ映画製作の独特の緊張感がありました。気が抜けない感じがデジタルとは違うと思いました。撮り直しが利かないから、一発に懸ける思いが強い。何度もリハーサルをして「よし行ける」となってからでないと撮れない。編集も一コマずつ細かく見ながらやっていく。セロハンテープが何枚もくっついてフィルムがごわごわになったり…。今はパソコンやスマホが一台あればできるのに、という不便さはありますが、その不便さが、逆に作品に対する気持ちを高めたり、価値を上げているような気がします。それが、今回作っていて楽しい瞬間だったと思います。

-もちろん、普段、動画を撮ったりもすると思いますが、自分でも映画を撮ってみたいと思いましたか。

 8ミリで撮りたいかといわれれば、現像して、編集して、機材もないし…と考えると、そこまで手は出ないです。でも、役者はいつも途中からしか映画に入れないので、今回最初の立ち上げから、最後にみんなに見てもらうまでを、一連で体験できたのは、自分にとってはすごく楽しい経験になりました。実際に映画を撮りたいとは思いませんが、この作品を撮っている間は、映画や写真を自分が撮っているという感覚はありました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「豊臣兄弟!」第2回「願いの鐘」豊臣兄弟の家族から直、寧々、市まで、女性キャラの活躍に期待【大河ドラマコラム】

ドラマ2026年1月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(=藤吉郎/池松壮亮)と共に天下統一を成し遂げるまでの奇跡を描く物語だ。1月11日に放送された第2回「願いの鐘」では、一度は故郷の村 … 続きを読む

原田美枝子、松田美由紀監督「映像のワンカットワンカットを体感してもらいたいと思います」「たくさんの謎がある映画なので、ぜひそれを解読してください」『カラノウツワ』【インタビュー】

映画2026年1月15日

 メジャーとインディーズの垣根を超えた多彩なクリエーターによる短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)」の第8弾となるオムニバス映画『MIRRORLIAR FILMS Season8』が、1月1 … 続きを読む

菅⽣新樹、2026年の抱負を語る「役者として地に足が着いてきた。やっとここからだなと」

ドラマ2026年1月14日

 菅生新樹が主演するドラマ「人は見た目じゃないと思ってた。」(テレ東系)が、毎週木曜0時30分から放送中だ。本作は人は誰のため、何のために“見た目”に拘るのか…ルッキズムの現代社会に一石を投じるファッションヒューマンドラマ。「人は見た目では … 続きを読む

西畑大吾「役をどう演じたらいいかすごく考えた」 ドラマ「マトリと狂犬」【インタビュー】

ドラマ2026年1月8日

 西畑大吾主演のドラマ「マトリと狂犬」(MBS・TBSドラマイズム枠/毎週火曜深夜)が1月20日にスタートする。本作は、「ヤングチャンピオン」(秋田書店)で2020年から連載されている同名漫画のドラマ版。  麻薬取締捜査官・黒崎、刑事・葛城 … 続きを読む

「豊臣兄弟!」第1回「二匹の猿」豊臣秀長、秀吉、織田信長 新味を感じさせる主要人物の初登場【大河ドラマコラム】

ドラマ2026年1月8日

 1月4日から放送スタートしたNHKの大河ドラマ「豊臣兄弟!」。大河ドラマで人気の戦国時代を舞台に、豊臣秀吉の弟・豊臣秀長(若い頃の名は小一郎)を主人公にした物語ということで、どのような幕開けになるのか、興味深く第1回を見守った。小一郎役の … 続きを読む

Willfriends

page top