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コリン・トレボロウ監督「いつか、もっと若い人たちに、この話を継続してもらいたい」 『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』【インタビュー】

 スティーブン・スピルバーグが製作総指揮を務め、約30年にわたり、恐竜と人類との戦いと絆を描いてきた「ジュラシック」シリーズの完結編『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』が公開中。新シリーズ3作の全てに関わったコリン・トレボロウ監督に、完結への思いなどを聞いた。

コリン・トレボロウ監督 (C)エンタメOVO

-ほとんど10年がかりだった、新たな「ジュラシック」シリーズ3部作を撮り終えた感想を。でも、本当にこれで完結ですか?

 10年かかりました…。けれども、私としては、これが最後になってもらいたくはない。私がこのシリーズに情熱を持ったように、いつか、もっと若い人たちに、この話を継続してもらいたいと思います。この10年間はとっても光栄な時期でした。シリーズは、世界中でヒットしましたが、特に日本で受け入れてもらえたことがうれしいし、本当に感謝しています。

-前作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(18)でのインタビューのときに、「今回の大きなテーマは、恐竜と人間との関係であり、恐竜に対する共感や感情移入を追及することだった」と語っていましたが、今回は、そのテーマをさらに発展させたものと考えていいのでしょうか。

 今回は、シリーズ6作品、全ての集大成というふうに考えています。人間は、自分たちが一番偉いと思って、とても横柄な態度を取っています。けれども、実は私たちはここにいられるだけで、生き延びているだけでも、とてもラッキーなことなのです。自然はものすごい力を持っていて、犠牲者を選びません。誰もが犠牲者になる可能性があります。ですから、今回はそうした自然に対する敬意の大切さについて描いています。

-同じく『~炎の王国』のときに、「3作目では、メイジーの存在によって、また新たな責任を得て、成長していくオーウェン(クリス・プラット)とクララ(ブライス・ダラス・ハワード)の姿をしっかりと描きたい」と語っていましたが、そのテーマはうまく処理できましたか。

 できたと思います(笑)。メイジーというキャラクターはとても大事で、特に若い女の子たちは、メイジーに対して反応するんです。彼女たちにとっては、メイジーのように、自分の居場所を見つけることはとても切実なことなのです。メイジーを演じたイザベル・サーモンは、とてもうまく演じたと思います。もともと、最初の『ジュラシック・パーク』(93)で、スピルバーグは、家族を見つけるということをテーマにして描いていました。この映画もそれを引き継いでいると思います。

-本シリーズで、事態を悪化させるのはいつもウー博士(B・D・ウォン)のような気がしますが…。

 確かに(笑)。でも、私は最初からウー博士のことを悪党だとは思っていません。彼はとても優秀な科学者なのに、あまり評価されていないところに不満があるのです。それで、より大胆で危険な選択をしてしまう。特に今回は地球を破壊してしまうような危機を呼んでしまうわけですが…。でも、やっと彼は救済されます。私はB・D・ウォンの演技がとてもよかったと思います。

-今回は、「ジュラシック・パーク」シリーズのサム・ニール、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラムを復活させましたが、その意図は?

 これからの子どもたちが、このシリーズを見るときに、当然6本はつながっていて、全てを一緒に見ると思います。その意味では、一つの長い物語として見てほしいという思いがあります。ですから、将来的にはそういう見方になるだろうと想定して作りました。

-完成した映画について、プロデューサーのスピルバーグはどういう反応でしたか。

 スピルバーグに、完成した映画を「はいどうぞ」と見せるわけではなくて(笑)、製作の途中で、彼は何度も見ているわけです。彼は素晴らしいキャリアのある巨匠ですが、このシリーズに関しては、思い入れが強く、特に今回は、自分がクリエートしたキャラクターを、久しぶりに見ることができたということで、親密な気持ちになったようです。

-監督のお気に入りの恐竜は?

 今回の作品では、テリジノサウルスが一番好きです。こんなものが本当にいたということが信じられません。それで気に入っています。SF映画とはいえ、本当にいた恐竜なので、彼らの形状には信じ難いものがあります。

-3部作を撮り終えて、改めてこのシリーズは監督にとってどういうものになりましたか。

 今、改めて思うことは、自分にとっては、自然界に対する警鐘や敬意という、大切なことを言う大きなチャンスを得たということです。地球上に人間がいるのは、恐竜たちの時代から見れば、ほんの一時です。私たちはゲストとして生きているようなものです。そうした大きなアイデアを、世界中の映画館で伝えることができた。それが一番素晴らしいことでした。

-今後はどんな映画を撮っていきたいですか。

 若者が映画館に来てくれるような作品を作っていきたいです。彼らが何を望んでいるのかに耳を傾けて、彼らの声を聞きたいと思っています。私がいろいろな映画を見て想像力をかき立てられたように、これからの若者にも、同じことが起こるような作品を提供していきたいと思います。それは、独りで家で見るのではなく、映画館でみんなが一緒に見るような作品です。

-映画の見どころと、日本の観客に向けて一言お願いします。

 日本の人たちは、このシリーズを受け入れてくれ、とても愛してくれました。それは、人と人、あるいは文化を近づけることにもつながると思います。見どころはたくさんあるので、ぜひ、映画館には、独りではなく、老若男女を問わず、みんなで見に来てください。私は家族が大好きなので。

-日本がとてもお好きなようですが、お気に入りの映画や監督は?

 黒澤明監督の『七人の侍』(54)『どん底』(57)『羅生門』(50)などをよく見ます。クロサワは世界的にみても偉大な巨匠の一人だと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(c) 2021 Universal Studios and Storyteller Distribution LCC. All Rights Reserved.

 

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