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【インタビュー】映画『パティシエさんとお嬢さん』崎山つばさ「ここまで純粋で、純白で、という恋愛映画はなかなかないと思います」

 名前も知らない人を好きになったパティシエと、相手のお嬢さんとのもどかしい恋を描いた『パティシエさんとお嬢さん』が5月6日から公開される。本作で恋に不器用なパティシエを演じた崎山つばさに、映画への思いや、食に関するこだわりなどを聞いた。

崎山つばさ(Photo:Tominaga Tomoko/Hair and Make-up:SUGA NAKATA(GLEAM)/Stilist:CBU-)

-見ていてじれったくなってくるような、不器用な恋が描かれていましたが、どんな気持ちで演じましたか。

 今回は名前も知らない人を好きになって、その人との、もどかし過ぎる“両片思い”の恋愛模様を演じるということで、まあ、僕ももういい大人ですから(笑)、その人に名前を聞くというのは、どんなイメージなのかと考えました。原作の漫画を読み、中学生ぐらいの頃の自分を思い出して、それと重ね合わせながら演じたところはありました。

-演じた役に共感できましたか。ご自身との共通点は?

 演じた奥野丈士は、好きな人に対しても、パティシエという仕事に対しても、ひたすら真っすぐで、そこはすごく似ていると思いました。一つのことに対して、他のことには目もくれずに取り組むところなどは、僕も作品作りに入ると、何よりもそれを優先するタイプなので、ジャンルは違っても、とてもよく分かると思いました。

-パティシエ役ということで、実際にケーキ作りもしたのですか。

 撮影に入る前に、東京製菓学校で先生からケーキ作りの工程や所作などを実際に教えてもらいながら、シュークリームやレーズンバターサンドなどを作りました。撮影現場でもケーキも作りましたし、手元の寄りの場面もあったので、それも自分でやりました。なるべく自分の手でやることを心掛けました。

-では、今回実際に自分でケーキを作ってみて、思いは変わりましたか。

 ケーキに対してもそうですが、パティシエという職業に対しても意識が変わりました。ケーキ一つを作るにしても、何十時間も費やされていて、作る前にも、商品のアイデアや、どういうケーキを作ればお客さんに喜んでもらえるのかを考えたりもするわけですから。今回、実際に撮影してみて気付いたのは、ずっと立ちっ放しなので足が棒になり、細かい作業もあるので目も疲れます。本当にパティシエという職業は、肉体労働なところもあるし、精神修行というか、自分との戦いみたいなところもあると思いました。だから、ケーキ一つを食べるにしても、撮影の前と後とでは全く違う感じになりました。今まではすぐにペロッと食べていましたが、もっと時間を掛けてじっくりと食べなければいけないと思うようになりました。

-お嬢さん=芙美子役の岡本夏美さんの印象は?

 撮影現場にぱっと電気をともしてくれるような明るく元気な人でした。いい意味で、役柄とは違う感じがしました(笑)。

-映画の見どころなど、観客に向けて一言お願いします。

 今回は、劇中にたくさんのケーキが出てきますが、ケーキの一つ一つに表情があって、丈士や芙美子さんの感情をケーキが体現してくれていると感じました。映画を見て、帰りにケーキが食べたくなったとか、買って帰ってうちで食べようとか、自分も恋愛してみようかなとか、気になる人がいるから連絡してみようかなとか、何かのきっかけになってくれたらいいと思います。丈士と芙美子さんの恋の行方は、共感するというよりも応援したくなるところがあるので、そこも見てほしいです。

-今回の映画はご自身にとってどういう位置づけになりますか。

 いろんな恋愛映画がありますが、ここまで純粋で、純白で、というのはなかなかないと思うので、そういう意味では、演じられてよかったと思います。昔の自分を思い出すきっかけになったのもよかったと思いました。いろんな意味で丈士という役を通して、自分と向き合う時間が多かったので、とても感謝しています。

-食へのこだわりは何かありますか。

 役のために体づくりをしたときがあって、そのときにジムの方にパーソナルでいろいろと教えてもらってから、食や健康に対する意識がすごく変わりました。食べる物がその人を作っていく、食事で健康になるということです。食べる時間によって吸収も変わってくるし、この食べ物にはこんな成分があったんだとか、すごく勉強になりました。昔はアクションが必要な役のときには減量をしていましたが、これを知ってから体重を減らさなくても維持できるようになりました。僕の仕事は、体が資本でもあるので、食べる物で体を作るという意識はすごくあります。

(取材・文/田中雄二)

(C)銀泥/一迅社 (C)2022『パティシエさんとお嬢さん』製作委員会

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