X


【インタビュー】舞台「カメレオンズ・リップ」&ソロ歌手デビューへの思い ファーストサマーウイカ「全てで1段ずつステップアップしていきたい」

 劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチの戯曲の中から、才気あふれる演出家たちが異なる味わいで新たに作り上げる「KERA CROSS」の第三弾公演となる「カメレオンズ・リップ」が4月2日から上演される。松下洸平、生駒里奈、岡本健一らが出演する本作は、古びた洋館を舞台に、甘美なだまし合いが繰り広げられるクライムコメディー。ファーストサマーウイカが、ガラ・トメート役で4年ぶりの舞台出演を果たす。今回は、ファーストサマーウイカに、公演への意気込みを聞くとともに、2月22日に発売となる「カメレオン」でアーティストとしてソロデビューすることへの思いも語ってもらった。

ファーストサマーウイカ

-「カメレオンズ・リップ」に出演が決まったときの気持ちは?

 久しぶりの舞台出演なので、正直、大丈夫かなという気持ちもありました。ですが、私自身のルーツは関西の小劇場の舞台から始まっているということもあり、KERAさんの本で河原(雅彦)さんの演出で舞台に立てるというのは、大変光栄なことだと思いました。そして、今、大人気の松下さん、生駒さんというすてきな方ばかりなので楽しみです。

-劇団に所属していたということですが、もともと、舞台や演劇が好きだったのですか。

 観劇が好きというより、舞台に立つということが好きでした。その情熱だけで、ネットで検索して見つけた劇団に即入団しました(笑)。高校生のときから音楽をやったり、文化祭では自分で脚本を書いて、演出もしてお芝居をしたりと、昔から出たがりだったんです(笑)。人と一緒に何かを作り上げて、それを達成するという過程も好きでしたし、稽古をして、公演をして、打ち上げをして、という劇団の活動も好きでした。

-2004年に堤真一さんと深津絵里さんなどのキャストで上演された本作の初演は見ましたか。

 はい、映像で拝見しました。深津さんがこの作品に出演されたのは、今の私と年齢が変わらない頃だったので、そう考えると足が震えました。私が演じるガラは、(犬山)イヌコさんが演じていらしたのですが、おじけづくぐらい迫力があって、でもせりふは繊細な作品だと感じたので、感性を研ぎ澄まして臨まなければいけないなと思います。

-今現在は、どのように演じたいと考えていますか。

 私とイヌコさんとは俳優としての特徴も違うので、あまり気にし過ぎず、今、自分が演じたらどうなるかというガラをお見せできたらと思います。松下さん、生駒さんも、初演とは全くキャラクターが違うじゃないですか。堤さんと深津さんは、姉弟の役なのにエロさが出ていたように思います。まさに「爬虫(はちゅう)類の唇」という言葉が似合いそうな2人でした(笑)。でも、松下さんと生駒さんは、透明感がすごい。例えて言うならば、レースのカーテンのような2人(笑)。そこにあるだけで、パッと明るくなって、存在感はあるのに誰の邪魔にもならない。優しさともろさを兼ね備えた2人なので、きっとそれに合わせてガラも変わってくると思います。もしかしたら、私と岡本(健一)さんがエロさを担うのかもしれませんし、あるいは私も松下さんと生駒さんが中心となった座組に入ったら同じレースのカーテンになれるのかもしれない(笑)。稽古場でどんな自分が出てくるのか楽しみにしています。

-舞台も久しぶりの挑戦ですが、2月22日にはソロデビューも決定しましたね。

 はい、くしくも「カメレオン」という楽曲をリリースします。この舞台には全く関係なく、タイトルは楽曲提供してくださったシンガーソングライターの阿部真央さんが名付けてくださいました。楽曲に関しては、真央さんが何度もヒアリングしてくださって。最終的に真央さんは「自分のことを書いた」とおっしゃっていましたが、丸ごと私自身のことを書いてくれたように感じて、歌詞の力に感動しました。真央さん節のメロディーラインと、人が持つ対人における内面の多面性を歌っています。恋人の前にいる自分と、両親の前にいる自分、職場にいる自分ってそれぞれ色が違うけど、どれも全部自分。でもどれも100全部見せているかな、見せて理解を得られるか? その場で色を変えてなじんでいくことをカメレオンに例えているのではと私は考えています。舞台と、「カメレオン」づいた上半期になりそうです(笑)。

-アーティストとしての活動は、以前からしたいと考えていたのですか。

 ちょうど1年ほど前から動き出してはいたんですが、新型コロナなどもあって、今になってしまいましたが、バラエティーに出させていただく前から、アイドルやグループ活動で音楽はやっていたので、音楽をやりたいという思いはやっぱりありました。お芝居もバラエティーも楽しいのですが、それらは正解が監督やプロデューサーや演出家など、自分ではない誰かの中にあるものだと思うんですよ。それを作り上げていくのももちろん楽しいのですが、音楽のように自分がいい、聞いてくれる人がいいと言ったらそこに存在できるものもやっていたかったんです。演技やバラエティーといった“部屋”を置きつつ、自由にできる音楽という“部屋”も開設した感じです。

-では、今後もバランスよく活動していきたい?

 そうですね。わがままを言わせてもらえば、全てで1段ずつステップアップしていきたいです。じゃあ、何をしている人なんだと聞かれたら、口ごもってしまうのですが(笑)。音楽アーティストでもあるし、女優でもあるし、ラジオDJでもあるし…(笑)。でも、今はそういう活動の仕方も珍しくないと思うので、大きな目標を掲げ過ぎず、細く長く頑張っていきたいと思います。

-改めてファンの方へメッセージを。

 今回のソロアーティストデビューで、今までの私の活動とはまた違った、新たな一面を見てもらえると思います。音楽は、世の中が沈んだときも常に力を与えてきたものです。鬱屈(うっくつ)した日々を過ごしている方にもぜひ聞いてもらえればと思います。

 そして、舞台「カメレオンズ・リップ」は、劇場はやはり素晴らしいということを体感してもらえる作品になると思います。今をときめく松下さんをぜひ生で見てほしいです。松下さんと生駒さんを始め、ここでしか見られないような組み合わせのキャストがそろっていますので、楽しんでいただけると思います。私のアーティストの一面を知っていただき、その後にステージで役者としての私にも出会っていただけたらうれしいです。

(取材・文・写真/嶋田真己)

KERA CROSS第三弾「カメレオンズ・リップ」

 KERA CROSS第三弾「カメレオンズ・リップ」は4月2日~4日、都内・北千住シアター1010、4月14日~26日、都内・日比谷シアタークリエほか、福島、大阪、愛知、新潟で上演。ファーストサマーウイカ、デビューシングル「カメレオン」は2月22日に発売。
「カメレオンズ・リップ」公式サイト https://www.keracross.com/keracross3

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

「光る君へ」第十七回「うつろい」朝廷内の権力闘争の傍らで描かれるまひろの成長【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年5月4日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。4月28日に放送された第十七回「うつろい」では、藤原道長(柄本佑)の兄である関白・藤原道隆(井浦新)の最期が描かれた。病で死期を悟った道隆が、嫡男・伊周(三浦翔平)の将来を案じて一条天皇(塩野瑛 … 続きを読む

妻夫木聡「家族のために生きているんだなと思う」 渡辺謙「日々の瞬間の積み重ねが人生になっていく」 北川悦吏子脚本ドラマ「生きとし生けるもの」【インタビュー】

ドラマ2024年5月3日

 妻夫木聡と渡辺謙が主演するテレビ東京開局60周年特別企画ドラマスペシャル「生きとし生けるもの」が5月6日に放送される。北川悦吏子氏が脚本を担当した本作は、人生に悩む医者と余命宣告された患者の2人が「人は何のために生き、何を残すのか」という … 続きを読む

城田優、日本から世界へ「日本っていいなと誇らしく思えるショーを作り上げたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年5月3日

 城田優がプロデュースするエンターテインメントショー「TOKYO~the city of music and love~」が5月14日から開幕する。本公演は、東京の魅力をショーという形で世界に発信するために立ち上がったプロジェクト。城田が実 … 続きを読む

【週末映画コラム】台湾関連のラブストーリーを2本『青春18×2 君へと続く道』/『赤い糸 輪廻のひみつ』

映画2024年5月3日

『青春18×2 君へと続く道』(5月3日公開)  18年前の台湾。高校3年生のジミー(シュー・グァンハン)は、アルバイト先のカラオケ店で4歳年上の日本人バックパッカーのアミ(清原果耶)と出会い、天真らんまんでだがどこかミステリアスな彼女に恋 … 続きを読む

「光る君へ」第十六回「華の影」まひろと道長の再会からうかがえる物語展開の緻密さ【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年4月27日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。4月21日に放送された第十六回「華の影」では、藤原道隆(井浦新)率いる藤原一族の隆盛と都に疫病がまん延する様子、その中での主人公まひろ(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)の再会が描かれた。  この … 続きを読む