『トランスフォーマー』シリーズの起源にさかのぼった『バンブルビー』が3月22日から公開される。1980年代を舞台に、心に傷を抱えた少女と地球外生命体バンブルビーとの関係に焦点を当てた本作で、主人公のチャーリーを演じたヘイリー・スタインフェルドが来日し、インタビューに応じた。
-本作は1987年が舞台で、当時のヒット曲が重要な役割を果たしていました。撮影中、音楽について印象的だったことがあれば教えてください。
曲で言えば、サム・クックの「アンチェインド・メロディ」は、チャーリーがお父さんと一緒に聴いた思い出の曲であり、チャーリー自身の物語ともつながっているので印象に残っています。また、チャーリーがガレージで自分が大好きなザ・スミスの曲をバンブルビーに聴かせるところも楽しかったし、カセットテープに入っている80年代の曲をバンブルビーに紹介するシーンでは、即興で自分の好きなスティービー・ニックスの曲を入れたりして楽しみました。
-本作では、バンブルビーがとてもかわいく描かれていましたが、彼の人気の秘密はどこにあると思いますか。
彼の魅力はたくさんありますが、一番は人間味にあふれているところだと思います。彼はただの金属生命体ではなく、感情や心がありますが、時には怖く、力強い存在になります。その一方、とても愛らしくてかわいいところもあります。そうした多面的なところが人気のもとになっていると思います。
-前回来日した『トゥルー・グリット』(10)は、西部開拓時代という遥か昔の話でした。今回もまだ自分が生まれていなかった80年代が舞台でしたが、そうした役を演じる上で心掛けていることはありますか。
俳優として、自分に全くなじみのない時代に没入できるのはとても素晴らしいことだと思います。もちろん事前にいろいろなリサーチはしますが、今回の80年代はそれほど昔の話ではなかったし、自分が成長する中で、両親の影響からその時代の映画や音楽に触れることもあったので、多少は知識がありました。なので、あまり違和感はありませんでした。俳優にとって、全く知らない時代に行くということは夢のようなところがあります。
-劇中で、車を運転するシーンもたくさんありましたが、自分でワクワクしながら撮ったシーンはありましたか。また今後もアクションに挑戦したいと思いますか。
ワクワクしなかったシーンを探すのが難しいほど撮影は楽しかったです。肉体的に大変だったところもあれば、興奮するような状況もあり、通常よりも頑張らなければいけないこともありました。また、感情を表に出さなければいけないときもありましたが、毎日必ずどこかでワクワクする場面がありました。
今後もチャーリーを演じ続けるかどうかは分かりませんが、またこのような機会があれば、ぜひやりたいと思います。今回のような、肉体的にも物理的にも体を使う作業は、とても緊張するし、体も鍛えなければなりません。例えば、ある日急に「ハーネス(安全ベルトの一種)を付けて40メートルぐらいまでクレーンで上がって」とか、「飛び込み台から水の中に飛び込んで」と言われましたが、それがとても楽しかったのです。
-今回の撮影に関して、ワークアウトやトレーニングはしましたか。また日頃から体は鍛えていますか。
今回は、運転や転ぶときの準備などは訓練しましたが、特定のトレーニングはしていません。幸い、父が私のパーソナルトレーナーなので、言い訳ができないですし、「どこかのジムに申し込もうかしら」と思っても、父がいるので、結局は父と一緒にトレーニングをすることになります(笑)。体を鍛えることは、頭と体の両方の健康にいいと思いますし、この映画のような役の話を頂いたときにも、すぐに対応することができるので、とてもいいことだと思います。
-本作は、バンブルビーを通して語られる一人の少女チャーリーの変化と成長の物語ですが、同年代のチャーリーと似ている部分や共感する部分はありましたか。
多くの部分でとても共感しました。今の私を見て「チャーリーとは全く違う」とおっしゃる人もいますが、そうではなくて、実はチャーリーという役は、私たちみんなが通った道や、感情の変化を体現しています。それは、自分が15歳から18歳ぐらいの多感な時期に感じた、不安や誤解、「誰も自分のことを分かってくれない」という思いや、混乱する感情。あるいは、ささいなことで「この世の終わりだ」と思ったり…。いまでも時々そういう思いに捉われることがあります。今回は、そうした、自分が感じていたことを表現できたので、チャーリーを演じながら開放感を得ることができました。
(取材・文・写真/田中雄二)