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広島県竹原市を舞台に、夢を追いかける少女たちを描いた「たまゆら~もあぐれっしぶ~」が、前作に続き安定したクオリティーで人々に感動を与えている。
沢渡楓(さわたり・ふう)は、高校の写真部に所属する17歳。亡くなった父・和馬の故郷である竹原で、形見のカメラを手に毎日シャッターを切る。第9話は、和馬の旧友である夏目望(なつめ・のぞむ)というスーツ姿の男性が町を訪れ、いつもの「たまゆら」を(いい意味で)乱してくれる。
夏目は、高校時代を和馬たちと一緒に竹原で過ごした。そのころは趣味で写真を撮っており、和馬が写真を始めたのは彼の影響だった。楓の撮った写真を見て「あいつの写真と同じだ。まったくひねりがない」と一蹴。だが厳しいことを言いつつも、楓の撮った写真の中に、いつしか自分が見失っていたものを見つける。
テクニックにばかりに気をとられ、いつしか写真を撮ることをやめてしまった夏目にとって、写真が好きという気持ちで撮りたいものを素直に撮った楓の写真は、技術的につたなくても輝きを放っている。それは、亡き友の思い出とも重なっていた。
年を取るにつれて、大切なものは変わってゆく。昔、自分が大切にしたいと思っていたものが何だったのか、忘れてしまうこともあるだろう。けれどそれはなくしてしまったわけではなく、胸の奥にしまい込んでいるだけで、実はきちんと残っている。長年、竹原を離れて暮らしていた夏目が、いつまでも故郷を忘れないのと同じように。
「たまゆら」は、ささやかだがとても大切なメッセージを持つ作品だ。山と海に囲まれた穏やかな町で、まだ芽生えたばかりの夢を育ててゆく少女たちの姿は、大人になって忘れてしまっていた、それぞれの大切なものを思い出させてくれるだろう。(松田はる菜)
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